HR TREND KEYWORD 2021│組織│ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング) 自己裁量や決定権を尊重するワークスタイル戦略 ヨランダ・ミーハン氏 Veldhoen + Company アジア地区統括マネジャー
コロナ禍によって働く場所や時間への制約が弱まっている。
企業は、オフィスの価値をあらためて考える必要があるのではないか。
そこでヒントとなるのが、オランダのVeldhoen + Company が提唱する「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」だ。
同社アジア地区統括マネジャーのヨランダ・ミーハン氏に話を聞いた。
「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」とは、従来の階層に基づいてつくられた働く場所ではなく、個人やチームの活動に応じて自律的に働く場所や時間を選択できる働き方だ。
1990年代初頭、オランダのワークスタイル変革コンサルティング企業Veldhoen + Company(以下、ヴェルデホーエン社)によって提唱され、同社はABWの“創始者”となった。
オンラインコミュニケーションツールはもちろん、スマートフォンの登場以前から、既存のオフィスの在り方や役割の変化を見据え、時間や場所に拘束されない自由な働き方を提示していることからも、ABWが極めて先進的な概念であることがうかがえる。
働き方の方法論ではなく「戦略」としてのABW
ABWは、従業員各人が「どこで」、「誰と」、「どのように」、「どんな」仕事を行うかを自律的に決めることが前提となっている。
「会社と従業員との間の『信頼』関係がベースとなり成り立つ」と話すのはヴェルデホーエン社でアジア地区統括マネジャーを務めるヨランダ・ミーハン氏だ。
「チームやメンバーをエンパワーメント(権限を委譲)し、彼ら自身がオーナーシップをもって働くことを促す、これがABWの本質です」(ミーハン氏、以下同)
そして、具体的にABWを成功に導く「3つの要因」があるという。
「1つめは成し遂げるべき仕事と活動内容に対する『理解』。次に仕事の助けとなる、適切な『ツール』や『テクノロジー』の存在。最後はオフィスの内外を問わず、自身の活動をサポートしてくれる適切な『環境』と『空間』です。この原則に基づいてABWをデザインしていくのです」
つまり、ABWとは表層的な働き方の方法論ではなく、従業員一人ひとりの自律性と働く意欲を引き出すワークスタイル戦略なのだ。
必要な環境は活動に応じて異なる
ヴェルデホーエン社では、仕事における活動を「10の活動(10 Activities)」に分類し、「個人の活動」、「少数での活動」、「ミーティング」、「その他」に大別している(図1)。