第3回 デジタル人材はどこにいるのか? 川手 文佑氏 EYストラテジー・アンド・コンサルティング ピープル・アドバイザリー・サービス マネージャー
いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。
第3回目では昨今、注目を集める『デジタル人材』とその確保について考えていきます。
バラバラすぎる“デジタル人材像”
コロナ禍により、「多くの業務をリモートで完結できるようにせねば、既存事業の成立が危ぶまれる」と考える経営者が増え、DXへの関心がいっそう強まっています。しかし、設備や組織の在り方を変えるだけでDXが順調に進捗するかといえば、話はそれほど簡単ではありません。私たちが支援している企業でも、「デジタルに強い人材が少なく、現場のDXが進まない」「データは集まるものの、分析し、打ち手を示せる人材がいない」といった具合に、DX を担う人材が不足していることへの課題意識が高まっています。「デジタル人材を確保するために施策を打ち出していこう」という号令もむなしく、協議が遅々として進まないといった相談も増えてきました。
混乱の原因はどこにあるのでしょう。様々な企業の協議に加わったとき私たちが感じるのは、デジタル人材の定義が人によってバラバラだということです。ある人は、「Excel の関数式、またはVBAやマクロを使いこなすスキルを備えた人材」と考え、またある人は、「膨大なデータを解析し、問題解決を図るデジタルサイエンティスト」と考えます。これでは、「デジタル人材が社内にいるor いない(または、充足しているor 不足している)」の議論さえ成り立たないでしょう。
筆者は、まずデジタル人材の定義とレベル感(階層)を定め、社内で共通言語化することを目指すべきだと考えます。全国各地に営業所をもつ、ある企業では、デジタル人材が足りないという認識は経営層において一致していたものの、協議では「非デジタル人材をデジタルが使える人材へ引き上げたい」という話と、「デジタル主導で課題解決できる人材を営業の最前線に配置したい」という2つの話が一くくりで語られていました。
どの階層のデジタル人材について話しあうかを決めなければ、全員が同じ議論の場に立つことはできません。そこでこの企業の協議に参加した筆者は、図1のような資料を提示し、「利用型人材」「課題解決人材」「価値創造人材」の3レベルに分けて考えるべき、と説明しました。