第2回 データドリブン型の営業組織はDXを成功させるのか? 千葉友範氏 EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング
いまこそ注目したい組織、人事領域のBuzzword。
第2回目では昨今、注目を集める営業組織のデジタルトランスフォーメーションについて考えていきます。
営業パーソンは100万人減少した!?
少し衝撃的な見出しかもしれませんが、総務省統計局「労働力調査年報」によれば、日本の営業パーソンは、2000年ごろのピーク時から約20年間で約100万人も減少しています(図1)。
背景には、大量購入・消費に支えられた「モノ」ではなく、「コト(体験)」を重視するようになった時代の変化や、テクノロジーの進化、ECの普及など流通構造の抜本的な変革があると推測されています。
一方で国勢調査によると、「営業・販売事務従事者」、つまり内勤担当者は、2010~2015年の5年間で14万人(25%)増加しています。セールス・マーケティングやインサイド・セールスといった新しい職種が生まれたためでしょう。
業界再編や顧客ニーズの変化から顧客とのつながり方の見直しが求められるなかで、企業はいま、「営業・販売」とは何かを見直す岐路に立たされているのです。
こうした潮流において、営業組織のデジタルトランスフォーメーション(以下DX)は様々なBuzzword のもとに議論されてきました。「働き方改革」「BPR(既存の組織や制度の再設計)」「成果型報酬」、さらに「CRM(顧客関係管理)」や「SFA(営業支援)」、モバイルやクラウドなどに代表されるIT ツール(以下、Sales Techと総称)などです。
とはいうものの、Sales Tech によるDXはさほど進展していません。総務省「情報通信白書」のデータを見ると、日本国内の企業におけるCRM・SFA の導入は約30%程度と推測できますが、筆者は利用実態(定着レベル)は高いとは言い難いと考えています。ITR 社の調査によれば、SalesTech の導入について「うまく利用できていない」と回答した企業は、56%にも及んでいます。HubsSpot 社の調査でも、Sales Tech を利用しない理由について、約40%の企業が「手作業によるデータ入力」や「他のツールと統合できていない」など、使い勝手の悪さを上位に挙げ、多数の企業が「Sales Tech の導入によって業務時間が延びた」と回答しています。
これが、営業組織におけるDXの現在地なのです。