OPINION1 鍵はジャストインタイム・ラーニング パフォーマンス・マネジメントにおける アウトプットとその高め方 中原孝子氏 ATD認定CPTD/インストラクショナルデザイン 代表取締役
欧米企業を中心に浸透しているパフォーマンス・マネジメントは、組織と個人の成長を
企業の経営目標や業績と結びつけた人材マネジメント手法として、日本でも注目が高まっている。
パフォーマンス・マネジメントにおいて、アウトプット力を高めるにはどうすればよいと考えられているのか。
また、人事・人材開発部門の役割について、欧米の先進事例に詳しいパフォーマンス・コンサルタントの中原孝子氏に聞いた。
パフォーマンス・マネジメントにおけるアウトプットとは
はじめに、パフォーマンス・マネジメントにおけるアウトプットについて確認しておこう。中原氏によれば、パフォーマンスとは[インプット→プロセス→アウトプット→アウトカム→リザルト]という一連の流れを指す(図1)。この全体をマネージしようというのがパフォーマンス・マネジメントである。そして、マネジメントすべき部分を明らかにするには、この一連の流れを逆から考えることが必要だと中原氏は語る。
「OKR(Objectives and Key Results)などの目標管理がそうであるように、パフォーマンス・マネジメントでは、最初に目標とすべきリザルト(業績目標、最終結果)の設定を行います。そのリザルトに到達するために必要なアウトカム(成果)を得るために必要なものとしてアウトプット(中間成果)があります。アウトプットは、インプットやプロセスによって得られた結果であり、一般に成果物といわれるものです。したがって、期待されるリザルトに到達するアウトカムを得るために、どのようなアウトプットが求められ、それを生み出すためにどのようなプロセスやアクションが求められるかを明確にします。そして、その定義に基づいた実際のアクション、プロセス、アウトプットに対するそれぞれのKPIに基づいて改善を加え、組織としてのパフォーマンスを高めていきます」
研修は、アウトプットを生み出すための行動に必要な態度や能力(コンピテンシーモデルや能力・行動要件)、知識やスキルの要件は何かを明確にし、実際に不足している部分に対して行うことになる。
「これらの要件が明確に示されていなければ、個々の社員はアウトプットを生み出すための最適な方法を探そうと右往左往してしまいます。要件が明確に定義されていれば、社員は効率的にアウトプットを生み出すことができますし、また要件に満たない部分を学習することによって、アウトプットの効果や効率を高めることが可能になります」
ジョブ型雇用にも不可欠なパフォーマンス・マネジメント
日本企業の間でメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行が進みつつあるが、その場合こそパフォーマンスの明確化が必要だという。
「メンバーシップ型の場合、製造業などの場合を除いて、アウトプットだけが示され、インプットに当たる行動が曖昧なケースが多く見られます。そのため、属人性が高く、各自が自分なりのやり方でアウトプットにたどり着くような状態になっているのではないでしょうか。アウトプットを生み出すために必要な行動、能力、スキルなどの定義が明確でないまま、何となくチームの中でできる人に依存しながら成果を生み出しているような状態では、ジョブ型へ移行することは難しいと思います。適切なアウトプットを生み出すために必要な行動についても明確に示すべきです」
しかし、行動を明確にすることは、本人の仕事のやり方を縛ることにはならないだろうか。それについて中原氏は、「基準・責任が明確だからこそ改善が可能になる」と指摘する。
「アウトプットやアウトカムに対する各自の責任が不明瞭なまま、タスクだけを決めてしまえばそうなってしまうかもしれません。しかし、責任が明確になっていれば、結果を出すために仕事のやり方を工夫したり学習したりすることは、各個人の責任になってきます。本来、仕事というものは状況によって変化していくものです。基準や責任が明確になっていれば、たとえ状況が変化しても、ギャップを把握して改善していくことが可能になります」