OPINION プレイフルに“クラッシュ”しよう 今後の学びの鍵は、 傷つくことを怖がらない姿勢や 状況を創ること 上田信行氏 同志社女子大学 現代社会学部 現代こども学科 特任教授
学習環境・ツールが多岐にわたる現在。
いまこそ座学以外の、場を介した学習の意義を問い直すべく、学習環境デザインを専門とし、「プレイフル」という概念の提唱者として知られる上田信行氏にその意義と考えを聞いた。
上田氏によれば、これからの学びは、“ プレイフル” に“ クラッシュ” することで個も組織もともに発達するのだという。
そのココロは。
エンゲージメントが低い=仕事・学びがプレイフルでない
米国ギャラップ社が行った調査※によると、日本企業の従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)は、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。仕事に熱意ややりがいを感じている社員の割合は、米国の32%に比べて6%しかないという。なぜ、日本の多くのビジネスパーソンは熱意ややりがいをもって働くことができないのか。
この数字の背景を学びという観点で見ると、能力至上主義の限界があると、同志社女子大学現代社会学部現代こども学科特任教授の上田信行氏は指摘する。
「『能力開発』という言葉がありますが、これまで企業の人材開発は能力の獲得に偏重しすぎていました。能力を身につけることはもちろん必要です。けれども、仕事や学びにはそれだけでなく、面白いと思うことに飛びつくとか、何かに夢中になるといった側面も大切で、いまはそれが欠けているのです。仕事を進めるための能力が足りないからエンゲージメントが低いのではなく、仕事を面白いと思えないから、情熱も傾けられない。だから仕事にインセンティブを感じない人が多くなっている。私はそう考えています」(上田氏、以下同)
1970年代に米ハーバード大学に留学し「セサミストリート」の研究等から、学びこそが楽しいんだということを追求してきた上田氏は、「プレイフル・ラーニング」を合言葉に、人がイキイキと学ぶ場のあり方としての学習環境デザインを研究している。「プレイフル・スピリット」とは、「新しいことや楽しいと思うことに真剣に取り組む精神のこと。どうすればもっと面白くなるのかと、脳みそが興奮して喜ぶくらい考え抜くこと」(上田氏)。この精神をもって課題に取り組むことがプレイフル・ラーニングだ。
※ State of the Global Workplace Report、 2017年発表のデータ
垂直方向よりも水平方向の発達を
上田氏のイメージでは、能力を獲得するための学びとは、知識やスキルを垂直方向にブロックを整然と積み上げていくようなもの。ところが、これは結構忍耐がいる。これに対して、水平方向への発達(学び)は、直感的に自分の知的好奇心を信じて、自分のもつ興味(interest)や情熱(passion)のままに世界をドライブし、自らの視野をどんどん拡張していくというものだ(図1)。