ART 日本美術家列伝〜室町時代〜江戸時代前期篇 表現者としての道を切り開いた日本画家の重鎮、雪舟 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
人材開発担当者にご紹介したいエンタメ情報です。
仕事の合間の息抜きにぜひ!
この連載は18世紀後半の京都の絵師たちから始めたが、いったん江戸時代を切り上げて、室町時代まで遡ることにしよう。それには理由がある。室町時代以前にも何人かの絵師の名が伝わるが、具体的な作品を通して生涯と画業の輪郭をとらえることができる者は皆無に近いからである。絵を描く者の実態は室町時代になってようやく明らかになるのだが、その先駆けの1人が、日本美術史上もっとも有名な雪舟である。
雪舟は「人が育つ」ということを考えるうえでも興味深い絵師だ。備中(今の岡山県)に生まれた雪舟は、初めは京都の相国寺で当時第一の絵師といわれた周文に師事したが、35歳ごろ、今の山口県を中心に勢力を誇っていた守護大名・大内氏を頼って西へ下った。当時京都で流行していた瀟洒な画風になじめなかったためともいわれるが、出世をあきらめて都落ちしたのである。ただこの決断が、後の成功への道を開いた。