ART 日本美術家列伝〜江戸時代篇 写実の基礎に奇抜な画風が加わり飛躍、奇想の絵師・長沢蘆雪(ろせつ) 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
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この連載ではこれまで、18世紀後半の京都で活躍した絵師たちを紹介してきたが、若冲にしても蕭白にしても、それぞれ飛び切りの個性派である。彼らが競い合った当時の京都画壇は絵画の黄金時代であったと思う。今回取り上げる長沢蘆雪は少し下の世代だが、大胆でユニークな画面構成という点では、先輩たちに一歩も引かない強者である。
まずは図版をご覧いただこう。六曲一双の大きな屏風の左隻に黒牛、右隻に白象が画面をはみ出すほど大きく描かれている。白象の背中に黒い烏、黒牛の腹の前に白い子犬を添えており、白と黒、大と小の対比を際立たせた大胆な構図である。ほぼ同じ図様の屏風が他に2セット知られており、この屏風が注文相次ぐ人気商品だったことがわかる。リアリズムの確かな技術もさることながら、発想の見事さが人気の理由であったに違いない。