OPINION2 まずは“自分の羅針盤”を見いだせ! 自律的にキャリアを築くため 求められる「学び」とは 橋本賢二氏 キャリア教育研究家
不確実な現代、重要なのは一人ひとりがキャリア・オーナーシップをもち、“ ありたい自分” を見据えて自らのキャリアを拓いていくこと。
キャリア教育研究家の橋本賢二氏は、その“ありたい自分”を見つけるために欠かせないのが、「学び」だと話す。
人生100年時代を生き抜くためのキャリアと学びの関係、そして学びの在り方について、話を聞いた。
「ありたい自分」を探すために
人生100年時代、第4次産業革命、VUCA、働き方改革――。世のなかには、「変化」を促すキーワードが溢れている。「このままでいいのか……」という漠然とした危機感も、徐々にだが確実に広がりつつある。
しかし、働き方やキャリアを巡る個々人の具体的な動きは、まだまだ活発とは言い難い。人はそう簡単に変われないのが現実だ。
「危機感による“強迫”は、個人が変わるきっかけのひとつですが、それだけではなかなか変われません」
キャリア教育研究家の橋本賢二氏はそう指摘する。
「もうひとつ、大切なのは“共感”です。世のなかで刻々と起こっている変化や課題を、ただ情報として知るだけでなく、当事者意識をもって自分ごととしてとらえる。それが自分にどう関係し、どういう影響があるのかを自覚すると、人は心から行動変容を起こします。変化に対応して動く人と動かない人との差は、その変化に当事者意識を強くもてるかどうかで決まります。そして今後、その差はますます広がっていくでしょう」(橋本氏、以下同)
橋本氏は経済産業省でキャリア教育や人材育成に関連する施策を担当し、同省が18年3月に公表した『人生100年時代の社会人基礎力』の策定にも尽力した。
「不確実な時代のなかで、唯一確かなことは、これまでのような『教育→仕事→引退』という画一的な人生のモデルが、今後も続くことはなく、どうなるかわからないということです。国や企業は、モデルを示せなくなりました。モデルがないからこそ、『自分はどうしたいか』が決定的に重要になってくる。キャリア設計や能力の開発を会社任せにするのではなく、一人ひとりが自分の在り方に当事者意識をもち、納得のいくキャリアを自律的につくっていく――いわゆる『キャリア・オーナーシップ』の涵養が求められるのです」
まずは自分ありき。社会との関係のなかで、自分はどうありたいのか。そこを突き詰めたうえで、仕事と結びつければ、働き方やキャリアの磨き方も見えてくる。自分の在り方という羅針盤を見いだすことが、人生100年時代を生き抜く第一歩になると、橋本氏は強調する。
だが、「ありたい自分」を見つけるなんて、スキルを習得するより、はるかに難しいのではないか。そう思う人もいるだろう。
「難しくて当たり前。見つからないのが普通でしょう」と橋本氏。
「だからこそ、『学ぶ』んですよ。それを探し続けるために」