第1回 懐を開き、現場を知る 人を育てるオープンな組織づくり 金丸宗男氏 三井住友銀行 常務執行役員
「金融業は人で全てが決まる」と語るのは三井住友銀行 常務執行役員の金丸宗男氏。組織を変え成長の原動力となるのは、オープンであることだという。銀行そのもののビジネスモデルが変わろうとしている今、人材育成をどのように捉えているのか。
現場に入り、ひたすら聞く
「現場が何を考えていて、何に課題意識を抱えているのか。働きがいや励みにつながるものは何か。そういったことを受け止める感覚を大切にしなければならないと考えています。ですから、本部にこもるのではなく、できるだけ現場に出るようにしています」
そう話すのは、三井住友銀行常務執行役員の金丸宗男氏だ。
支店勤務を経て、企業調査部門に在籍。融資を行う企業の信用調査や業界動向のリサーチに長く携わった。その後、営業として法人取引先の新規開拓を担う渉外係や法人担当を経験。法人営業の部長を務め、2015年に人事部長に就任した。
現場を深く知ることの大切さは、現場経験から学んできたものだ。例として挙げられるもののひとつが、事業調査部時代の出向である。融資先のある企業が経営危機に陥った際に出向した金丸氏は、外様であるが故に厳しい洗礼を受けたという。
「最初は『銀行のスパイですか?』などと言われました。会社の再建どころか、どこかで債権回収を目論んでいるのではないかと疑われていたようです(笑)。ショックでしたね」
どうしたら組織に溶け込めるのか。金丸氏が出した答えは、まずは信頼してもらうということだった。
「信頼なしに前進などありえないと思ったんです。ですから、信頼してもらうため、とにかく話を聞くことに徹しました。財務指標など表面的なことではなく、もっと会社の内面に迫らなければ再建の鍵は見つかりませんから。『ウチ(の会社)って、どうして業績が悪化したんでしょうね』と、聞いて回りました」
全国の事業所を巡る日々が1年近く続いたが、どこへ行っても丁寧に話を聞き、就業後の飲み会にもよく参加したという。