OPINION2 優秀な人材のリテンションのために フィードバックを重視し 現場主導の評価制度に
世界的な人材の争奪戦が起きている。
注目したいのは、先進的なグローバル企業で広がる「日常的なフィードバックを重視した評価制度」である。
日本企業は、この変化をどう受け止めるべきなのか。
グローバル人事評価制度に詳しい土田昭夫氏に聞いた。
世界共通制度で人材見える化
今、世界中の企業が直面している問題が、優秀な社員の発掘・獲得・リテンションだ。国境を越えて活躍できる人材、イノベーションを起こせる人材をめぐり、熾烈な争奪戦が起きている。
優秀な人材をいかに発見、あるいは他社から引き抜き、囲い込むかという優先課題を解決するため、人事評価制度を見直すグローバル企業が増えている。改革の1つが世界共通の人事制度の導入だ。グローバル規模で優秀な人材を発掘するには、どの国にどんな人材がいるか見える化し、同じ制度で評価することが望ましい。
ただし、世界共通の人事制度(標準パッケージ型※図1参照)は欧米のグローバル企業ではよく見られるが、日本企業ではまだ稀だ。部長以上限定など、一部でグローバル共通の人事制度を導入したものの、世界規模の人材発掘や最適配置という当初の狙いは達成できず、「結局、日本本社と海外拠点とでそれぞれ異なる人事制度を設けた」という例が圧倒的に多い。
うまくいかない背景には、現地法人や買収先の経営に対する本社の統制の弱さもある。一方で、日本企業独特の人材管理に対するアプローチ、特に厳密な制度設計も1つの原因だ。例えば、細かな等級制度や階層ごとのコンピテンシーなどを設ける日本企業は多いが、海外の多様な人材のマネジメントには向かない。
制度設計に柔軟性を持たせたうえで、世界共通システム導入を再度検討すべきだろう。
海外人材を惹きつけるには
人材の獲得、リテンションの観点から評価制度を考えた場合、会社に対する社員のエンゲージメントの強化がポイントになる。かつては、レーティング(相対評価)によって社員を競争させ、評価の高い社員については、報酬などの直接的なインセンティブによってエンゲージメントを高めようとした。しかし、それだけでは、よりインセンティブの高い企業が現れれば、簡単に引き抜かれてしまう。そのため、報酬以上の価値を社員に示す必要が出てきた。
そこで注目されるようになったのが「成長実感」による他社との差別化だ。会社の中でどれだけ成長でき、キャリアアップの機会を得られるかを、社員に明確に示すことが勝敗の分け目となりつつある。