第1回 プレイングマネジャーの意識転換 有沢正人氏 カゴメ 常務執行役員/CHO|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決ができない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに現場の「困った!」が届きました。
新連載・第1回目のテーマは「プレイングマネジャーの意識転換」。
ゲストにカゴメCHOの有沢正人氏をお迎えし、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
二刀流マネジャーは中途半端になりやすい
中原
あるあるのお悩みですね……。プレイングマネジャーとは、部下育成やマネジメントを行う「マネジャー」の役割と、自ら現場でチームの成果に貢献する「プレーヤー」の役割とを同時に行う“二刀流”マネジャーのことですね。といっても、このケースでは、部下育成やマネジメントに徹してほしいのにそれができないマネジャーを指しています。ある意味、プレーヤーにしがみついているマネジャー、ともいえます。有沢さんはどう思われますか?
有沢
プレイングマネジャーからマネジャーへの転換ができない原因は、そもそもの目標設定に問題があるからだと思います。マネジャーなのかプレーヤーなのかをはっきりさせない限り、部下育成のできるマネジャーは育ちにくいものです。役割を転換させたいのであれば、期初に目標設定する際に、人材育成と業績目標のどちらを優先させるのか、タスク(仕事の役割)を明確にする必要があります。
中原
多くの会社は「人も育てて、成果も出して」と、このあたりをあやふやにしていますよね。
有沢
そうなんですよ。だから評価も曖昧なものになってしまう。役割期待が違う場合、評価体系も別にしなくてはなりません。そもそも役割期待、もっと言えばジョブが異なる場合は、評価のやり方も異なるはずだからです。どの役割をどこまでやってほしいのか、基準を明確に示す必要がありますし、エンジェルスの大谷翔平選手のように二刀流でやってもらうのであれば、評価体系はもちろん、報酬も他の人と変えなくてはならないはずです。
中原
部下育成も業績達成も100%できてしまう超一流プレイングマネジャーは、なかなかいません。
有沢
実際はマネジメントも業務も抱え込んでしまい、にっちもさっちもいかなくなるプレイングマネジャーがほとんどです。ですので、なにより大切なことは、タスクを分けることです。プレイングマネジャーの上司である部長に優先順位を決めてもらいましょう。
中原
上司と合意しておくのは大切なポイントですね。