J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

特集│CASE 1 ヤッホーブルーイング  効率やコストにとらわれない  コミュニケーションの土台と 学びの機会でアウトプット力を醸成

フラットな組織運営のもと、独自の企業理念である『ガッホー文化』を掲げ、社員同士での合意形成による意思決定を重視するヤッホーブルーイング。
いわゆるティール組織の先駆的存在である同社では、社員の「アウトプット力」の向上に向け、具体的にどのような取り組みを行っているのだろうか。
人材開発を担当するモチベーションブルワーズの高畑健太郎氏に話を聞いた。

高畑 健太郎氏
ヤッホーブルーイング モチベーションブルワーズ(HR) ユニットディレクター

株式会社ヤッホーブルーイング
1997年創業。「ビールに味を! 人生に幸せを!」をモットーに、これまで画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出するとともに、ビールファンにささやかな幸せをお届けするというミッションを掲げ、多様で個性的なクラフトビール製造や各種イベント等を展開している。
資本金:1,000万円
従業員数:149名(2020年9月末現在)

[取材・文]=田中 健一朗 [写真]=ヤッホーブルーイング提供

「有益なアウトプットの種は、皆、心のなかにもっています。我々が腐心しているのは、『いかにそれを引き出せるか』ということです。

当社はフラットな組織であることが報道されていますが、フラットな組織であり続けることが目的ではなく、議論を尽くし、最善の打ち手を決め、社員全員が納得感をもちながら業務を行うことで、企業にとって最高の成果を出す。そのために一人ひとりが自分の意見や考えを発信し続けることこそ、質の高いアウトプットへの第一段階です」

こう述べるのは、『よなよなエール』などのクラフトビールで知られるヤッホーブルーイングで、モチベーションブルワーズ(HR) ユニットディレクターを務める高畑健太郎氏である。

15年連続増収増益、大手がシェアを占有するビール市場でもファンを増やし続ける同社の成長の土台には、「成果につながるアウトプット」があった。

具体的にはどんな施策を行っているのだろうか。以下に見ていこう。

コミュニケーションコストは惜しまない

まずは、2014年にUターンで同社に転職した高畑氏も最初に体験した、1カ月間の入社研修だ。

「一般的なキャリア採用であれば、いわゆる即戦力として、すぐ現場に配属されるでしょう。しかし当社では新卒・中途を問わず、入社研修にじっくり時間をかけます。企業文化や仕事の進め方を理解するために作成されたプログラムを通じて、まずは社員の“インプットの目線”を揃えていきます」(高畑氏、以下同)

コミュニケーションの質を支えるコミュニケーションの量も、一定量担保されている。毎朝30分間、仕事の話を一切しない“雑談だけ”の朝礼はその一例だ。

「一見、効率度外視にも見えるかもしれませんが、雑談は個々の社員の人柄や価値観、プライベートを知るうえで非常に効果的です。たとえば、『子どもが風邪をひいて大変だ』とか『送り迎えがある』といった話を常日頃から聞くことで、あるメンバーがミーティングに参加できなかったとしても、相手の状況を想起し、思いやることができます。

また、当社には会議も含め、普段から否定的な言葉選びを避けるグランドルールがあります。こうした工夫により心理的安全性を高め、さらに『同僚への敬意』をもつことで、お互いが本当に言いたいことが言いあえる環境をつくることができるのです」

社員同士が情報や知識を共有し、意見を出し尽くす「土台」として、コミュニケーションコストを惜しまない文化が根づいているのである。

アウトプット力を高める20以上の施策

土台の上には、様々な施策があった(図1)。本稿では3つ紹介しよう。

①「資質一覧」の共有(資質テスト)

「社員は皆、キャリアやバックグラウンドを含めて、それぞれ違う考えや価値観をもっているという前提で働いています。だからこそ、当社が重視しているものの1つに、一人ひとりの“資質”があります。当社では、社員の強みを可視化した『資質一覧』として、社内でオープンにしています」

「資質一覧」(次ページ図2)とは、ある自己診断テストの診断結果を任意で公開したものだ。34ある資質のうち上位5つの資質を全社員へ共有することで、各人が強みとする資質を磨くとともに、他の社員の強みを理解しあうことができる。

「社員同士での資質の共有と理解は広がっており、『資質一覧』を前提としたコミュニケーションも浸透しつつあります。また、弱みを埋めることに多くの時間を割くのではなく、強みを伸ばしていくことによって、社員自身の適性や質の高さが担保されていく施策だと考えています」

②ユニットディレクター立候補制度

ヤッホーブルーイングには「社長」「ガッホーディレクター」「ユニットディレクター」「プレイヤー」の4階層しか存在しない。そしてプレイヤー以外はすべてユニットディレクター(UD)立候補制度によって決定される。2020年には20名の社員が立候補した。

「立候補制度では、中長期的な経営戦略、事業計画を描いた独自の打ち手を全社員に向けて提案し、360度評価による投票で信任を得ることとなります。そのためには、業務外の限られた時間のなか、あらゆる手段を尽くしてインプットを行い、自ら勉強することが必要不可欠です。おのずと質の高いアウトプットを出す行動が求められる制度だといえます」

③プロジェクト制

「プロジェクト制」とは、就業時間の20%を社員の「やりたい仕事」や「取り組んでみたい業務」に割り当てることを推奨する制度である。

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