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月刊 人材教育 2017年02月号

SPECIAL COLUMN 行動の“きっかけ”を整える 望ましい行動を導く「仕掛け」のチカラ

人の“ 望ましい行動”を引き出す方法のひとつとして、ぜひ紹介したいのが「仕掛け」である。
つい試してみたくなる。普段の行動を変えてみたくなる。
そんな「仕掛け」のカラクリを第一人者に聞いた。


松村真宏(まつむら なおひろ)氏
大阪大学 大学院経済学研究科 准教授

1975 年生まれ。大阪大学基礎工学部卒業。
東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
博士(工学)。2007年より現職。2004年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校客員研究員、2012年~2013年スタンフォード大学客員研究員。著書に『仕掛学―人を動かすアイデアのつくり方』(東洋経済新報社)がある。

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=編集部

“仕掛け”とは何か

マンガ本の背表紙に、イラストの一部が描かれたものを見たことはないだろうか。次の巻にはイラストの続きが描かれていて、イラストを完成させると、自然と1巻から最新巻までを順序よく並べられる。大阪大学大学院経済学研究科准教授の松村真宏氏は、このマンガ本のような“仕掛け”を研究し、「仕掛学」を提唱する。

「“仕掛け”とは行動デザインのひとつです。私たちが日々直面する問題の多くは、自身の行動に由来するものです。また身の回りの行動には、その行動を導く“きっかけ”が深く関わっています。仕掛けとは、問題行動にアプローチし、より望ましい行動に導く“きっかけ”のことを指します」(松村氏、以下同)

仕掛けによって、無理なく望ましい行動変容を得られるなら、これを利用しない手はない。効果的な仕掛けには、どのような特徴があるのか。

仕掛学では、仕掛けを満たす3つの条件を「FAD要件」、Fairness(公平性)、Attractiveness(誘引性)、Duality ofpurpose(目的の二重性)として定義している(図)。

例を挙げよう。男性用トイレでは、便器周りへの“尿跳ね”が問題となる。そこで、便器の最も飛散しにくい場所に的のシールを貼ると、尿を的に当てて用をたすようになる。シールは、望ましい場所を狙って用をたす行動を促す“きっかけ”である。

この仕掛けをFAD 要件に当てはめた時、Fは説明不要だろう。Aについては後述する。Dは、仕掛けられる側は「尿を的に当てる」、仕掛ける側は「トイレをきれいに保つ」という目的の二重性が確保されている。

そしてAである。「誘引性」は仕掛けの成否を握る重要なポイントだ。なぜなら、仕掛けは行動の強制をよしとしないからだ。

「仕掛けは、行動の選択肢を増やしているに過ぎません。その選択肢の中から、選ばれるような行動を促している仕掛けが、よい仕掛けといえます」

トイレの的のように“誰もが利用したくなる仕掛け”には、どのような誘引性が隠れているのか。

「“的は狙って当てるもの”という的から想起される知識を用いて、“的を当てたい”という挑戦意欲をうまく引き出しています。仕掛学では、前者を『物理的トリガ』、後者を『心理的トリガ』と呼んでいます※。物理的トリガは心理的トリガを刺激する役割を果たし、両者が組み合わさって1つの仕掛けが成立しています」

※物理的トリガ…知覚される物理的な特徴
  心理的トリガ…人の内面に生じる心理的な働き

行動の“きっかけ”を変える

では、実際に仕掛けをつくるにはどうすればよいのか。一例として、次の手順が考えられる。

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