J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年11月刊

私のリーダー論  人を残すことこそ自分の役割。好奇心を引き出し 皆で一歩踏み出す組織へ

豊富な次世代人材育成プログラムのもと、海外研修等、人材育成に注力しているプリマハム。
2018年から社長を務める千葉尚登氏は、人を残すことを経営の重要課題とし、就任時より「人材の質の強化」の重要性に言及してきた。
自身は組織の「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ジャンプ」を担うと語る千葉氏に、具体的な取り組みや、伊藤忠商事時代に岡藤正広氏や丹羽宇一郎氏から受けた薫陶などを踏まえた人材育成の考え方や想いを聞いた。

千葉 尚登(ちば なおと)氏
プリマハム 代表取締役社長 社長執行役員

生年月日 1958年10月31日
出身校 東京大学農学部農業経済学科
主な経歴
1983年 伊藤忠商事 入社
2004年 飼料・穀物部長
2005年 食料経営企画部長
2013年 生鮮食品部門長
2014年 執行役員 食品流通部門長
2015年 Dole Asia Holdings Pte .Ltd 出向(EXECUTIVE VICE PRESIDENT,DIRECTOR)シンガポール駐在
2016年 プリマハム 常務執行役員加工食品事業本部分掌 食肉事業本部分掌 監査部担当
2016年 常務取締役 加工食品事業本部長
2018年 代表取締役社長(現)
2019年 社長執行役員(現)
現在に至る

企業プロフィール
プリマハム株式会社
1931年、金沢で創業。「正直で基本に忠実」「商品と品質はプリマの命」「絶えざる革新でお客様に貢献」を経営理念に、食肉、ハム・ソーセージ、加工食品の各分野を柱とした事業展開を行う。
資本金: 79億800万円
連結売上高: 4,180億円(2020年3月期)
単体従業員数: 1,059名(他に平均臨時雇用者数836名、2020年)

取材・文/村上 敬 写真/山下裕之

─現在の経営課題を教えてください。

千葉(尚登氏、以下敬称略)

直近の業績は順調です。我が社はスーパーに卸す商品の比率が高い。コロナで直撃を受けた外食向けはもともと取引が大きくなかったため、業績にネガティブな影響はほとんどありませんでした。

しかし、今順調だからと言って油断はできません。我が社は20年前、倒産しかけましたが、伊藤忠商事(以下、伊藤忠)が中心となって再建案をつくり、実行しました。当時の従業員は厳しかったと思いますよ。外から人が来て、人員を含めたコストカットをしましたから。ただ、それで10年弱かけてようやく利益が出る体質に戻りました。

そのころ、私の前任の松井(鉄也)社長が就任し、今度は従業員の自主性を尊重した様々な活動を推進しました。もちろん企業の体力を回復させたからできたわけです。そうして従業員のやる気が高まったところで、2018年に私が社長を引き継ぎました。私はいわば「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ジャンプ」を担っています。

一般的に「財を残すのは三流、業を残すのは二流、人を残すのが一流」と言われますが、当社は先輩たちの尽力により、ようやく最終段階のジャンプまでたどり着くことができました。

ジャンプの中身は「人」です。人を育てて残すことが、今の重要な経営課題だと考えています。

前例主義から脱却して好奇心をもつ人材育成を

─人材について、現在はどこに課題があると考えていますか。

千葉

一言でいうと、前例主義で、ガラパゴス化しつつあった社風や組織を変えていく必要があると思っています。私がプリマハムに来て最初の経営会議で驚いたのは、環境問題が議題の1つに挙がっていたのに、ペーパーレスについて触れられていなかったこと。他にも、テレビ会議のシステムは入っているのにほとんど活用されていないなど、時代についていけていなかった。

コロナ禍で世の中は大きく変わりました。たとえば私たちのお客様の購買行動も、お店に行くだけでなく、商品をネットで購入されることが以前に比べて増えました。このような変化に対応してビジネスも変えていく必要があります。

別に難しいことを求めているわけではありません。私は伊藤忠時代に海外に駐在していたときから、グループ会社の経営会議にテレビ会議で参加していましたし、今も出張先からスマホを使って参加しています。

私自身、タブレットやスマートウォッチ等の新しい技術が使われたものは、発売されたら使ってみるようにしていますが、身近なところから好奇心をもって何事も試してみることが大切です。

要は、変わろうとする意識があるかどうか。変化を前向きにとらえて、好奇心をもって新しいことに一歩踏み出すことができる人を育てていきたいですね。

─どうすれば意識を変えることができるでしょうか。

千葉

実はプリマハムも新しいことに挑戦してきた歴史があります。たとえばディズニーランドの貸切がそうです。我が社は開業当初からスポンサーを務めていますが、約10年前に予算の問題から見直しを検討したことがありました。ただ、契約期間がまだ2年残っていたので、思い切って貸し切り、我が社の商品を買ってくれたお客様をご招待するキャンペーンをやりました。

これがとても好評で、3時間の限定ですが、通常時よりもかなりゆったりとアトラクションを楽しむことができます。レアな機会なので応募が殺到して、応募に必要な商品のバーコードがフリマアプリで売買されたこともあったそうです。

そのような成功体験があって、最近は有明のスモールワールズTOKYOや、レゴランド・ジャパンのスポンサーも始めました。もともと新しいことに挑戦する意識がないわけではない。教育で、それをうまく引き出していきたいと考えています。

コロナをきっかけに「社長塾」を開講

─具体的にはどのような育成プランをもっていますか。

千葉

我が社は経営が厳しい時期に採用を絞っていたため、30代の社員が極端に少なくなっています。ヒューマンツリーがいびつですから、それに合わせて世代別の育成をしていきます。

鍵になるのは40代です。今後の当社の将来を担うのは20代などの若手社員です。しかし、この世代はすぐ上に先輩がいないため、40代社員が見本になります。そこでまずは40代社員を鍛え、見本にふさわしい人材になってもらう必要があります。

今、我が社はDX に取り組んでいます。情報システム部をIT 推進室に組織変更し、さらに新たに「プリマネクストプロジェクト」を立ち上げ、ガラパゴス化していた業務プロセスの見直しを進めていくのですが、実はこのチームの中心が40代社員です。このプロジェクトを進めるなかで、「会社の問題点を解決するとともに自分たちも一緒に変わっていこう」という意識が芽生えてくれたらいいなと期待しています。

─ミドル層に向け、他にどのような学びの機会を提供していますか。

千葉

もともと実施していたなかで特徴的なのは、人事部主催の選抜者による異業種交流会でしょう。これはとても刺激になると思います。伊藤忠でも、異業種交流の研修をよく実施していました。たとえば経済産業省などの省庁や、民間団体と合宿形式でディベートを行います。視野を広げるという意味で、異業種の方と深いお付き合いをすることは必ずプラスになるはずです。

ちなみに我が社と伊藤忠との交流も活発で、相互に社員が出向しています。これもいい勉強になるでしょう。

─千葉社長の就任以降に始められたミドル対象の育成は。

千葉

コロナをきっかけに、今年4月からリモートで「社長塾」を始めました。実は伊藤忠でも「社長塾」をやっていたので、それを参考に当社でもやってみようと思ったのです。

最初は会計や人事戦略を解説する講座をやるつもりでした。ただ、社員に聞くと、「社長の伊藤忠時代の話を聞きたい」「これからのプリマの話が聞きたい」といった要望が多いことがわかりました。そこで最初の数回は私の伊藤忠時代の経験を伝えました。

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