J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年09月刊

特集│CASE 2 コニカミノルタジャパン “言わなくてもわかるだろ”からの卒業を テレ・マネジメントの鍵は アサインの“言語化”にあり

情報機器大手のコニカミノルタの国内事業会社であるコニカミノルタジャパンでは、2013年に働き方を見直すためのプロジェクトをスタート、2017年からは全社員を象にテレワークを解禁し、オフィスにしばられないワークスタイルを広めてきた。
さらに2020年、新型コロナウイルス感染症対策のため、在宅勤務を原則とする働き方にスイッチ。
そこで見えてきた新たな課題と傾向、そしてテレ・マネジメントのポイントについて、人事部トップの伊崎公司氏に話を聞いた。

伊崎公司氏 コニカミノルタジャパン コーポレート本部 人事総務統括部 人事部 部長

コニカミノルタジャパン株式会社
コニカミノルタグループの情報機器事業、ヘルスケア事業、計測機器事業の国内販売部門を統合する形で、2016年に設立。
「ビジネス社会・人間社会の進化を継続的に創出すること」を理念に、課題提起型のビジネスを展開。
2018年には、自社のソリューション・サービスと社内の働き方改革プロジェクトでの成果を活かし、「いいじかん設計」のコンセプトを確立。新しいワークスタイルを提案し続ける。
資本金:3億9,710万円 
売上高:1,407億円(2020年3月期)
従業員数:3,334名(2020年4月時点)

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=コニカミノルタジャパン提供

事業戦略としての働き方改革

コニカミノルタジャパンが、他社に先駆け働き方改革に着手したのは2013年である。

きっかけは2つ、1つは翌年に控えた日本橋から浜松町への本社移転、もう1つは主力としていた複合機を主体とした販売事業からの転換を図るためだった。オフィスのIT 化とペーパーレス化が進み、これまでのビジネスモデルを進化させる必要があった。次世代につながる事業のシーズを見いだすには、本社移転を活かさない手はないと考えたと、コーポレート本部人事総務統括部人事部部長の伊崎公司氏は説明する。

「当時は“ワークスタイルデザインカンパニー”と銘打ち、お客様企業にとって最適なオフィス空間を提案し、それに見合うソリューションを届けることに、事業の主軸を移しつつありました。当社には“自社実践”という、まずは自分たちで試し、いいところも悪いところもすべて出そう、その経験をビジネスに活かそうという風土が培われています。私たちの組織の働き方を変えることで得た知見は、そのまま新商品の開発やお客様への提案につながるという発想で始まったのです」(伊崎氏、以下同)

つまり同社の働き方改革は組織の成長戦略にとどまらず、事業戦略とも直結するものだったといえる(図1)。そのため進め方も現場主導で行われた。社長直轄の「働き方変革プロジェクトチーム」を立ち上げ、若手・中堅を中心に各部署からメンバーを募った。50人程度のメンバーが中心となり、オフィス運用のしくみやICT の活用、新しいワークフローなど、社員自らが考えた取り組みが生まれた。

このプロジェクトは、毎年メンバーを変えながら継続的に活動している(現在は「働き方改革プロジェクト」と名称変更)。経営層は変革の重要性を社内に訴え、マネジメント層は推進責任者となり、プロジェクトの活動をバックアップする。そして人事はプロジェクトの活動を受け、人事制度や施策に反映すると同時に、社員に対して働き方に対する意識向上の啓発活動を行っている。

雑談から始まったテレワーク

テレワークの導入も、人事部と働き方改革プロジェクトの共同企画として進められた。

「きっかけは、プロジェクトメンバーとの雑談でした。パソコンは持ち運びできるし、Wi-Fiも私たちの生活に欠かせないものとなった。ネットがつながる環境なら、どこでも仕事ができるはずと、試しにやってみようということになったのです」

それが2016年に行われた、「テレワークトライアル」につながる。子どもの夏休みにあたる7月下旬から8月いっぱいまでの期間に、すべての社員が一度はテレワークを実施するという試みだ。課題を洗い出し、本運用に向け検討することが目的だった。

「トライアルの実施にあたり、私たちは『生産性向上』が目的だというメッセージを打ち出しました。当時はオフィスに出社して働くことが当たり前で、テレワークというと育児などを理由に出社がどうしても難しい場合に使うといった、福利厚生のイメージが強かったと思います。でもそうではなく、誰もが場の制約を受けずにスムーズに働ける、次世代の働き方を実践しようという考えのもとに進めていきました。幸い現場にも、その考えは自然と受け入れられました」

実際に始めてみると、システムにログインできない、サーバーにアクセスできない、自宅で仕事できる環境が整っていない、必要な資料が紙で会社に保存されているため、家での作業がストップするなど、数々の課題が浮き彫りになった。当然ながら“部下の働く姿が見えない”と、不安になる管理職もいた。新型コロナウイルス感染症の影響で、今年の春先にテレワークを導入した会社は同様の課題に直面しただろう。同社では、2016年に、このトライアルで表出した課題を一つひとつ潰し、テレワークに必要な環境を整えていた。

週1と毎日では勝手が違う

テレワークの本格運用はトライアル翌年の2017年から開始。2年後の2019年には全社員の7割がテレワークを月に一度以上利用し、毎週行う人が全体の3分の1にのぼるようになった。働き方の選択肢の1つとして、テレワークが浸透したのである。

そして2020年、新型コロナウイルス感染症への対応においても、出社しなければできない仕事を行う場合を除き、原則として全社員を在宅勤務とした。幸いこれまでの取り組みの蓄積があったため、VPN(VirtualPrivate Network:セキュリティー上安全な経路を使ってデータをやり取りすることができる仮想専用線)によるセキュリティー対策や、サーバーの強化、システムへのログインなど、ハード面での混乱は見られなかった。また「保管文書ゼロ化プロジェクト」によりペーパーレス化が進み、ほしい資料はサーバー経由で見ることができ、従業員のスケジュールはイントラに1週間単位で入力することが浸透しているだけに、社員同士の時間管理の面においても特段困るようなこともなかったという。BCP(BusinessContinuity Plan:事業継続計画)の観点からも環境は整っていたといえよう。

しかし同時に、週に一度と毎日では同じテレワークでも勝手が違うことを痛感したと伊崎氏は話す。

「ほとんどの社員が一斉にテレワークに移行したことで、これまでは問題にならなかったことも表面化しました。たとえば代表電話は誰がとるのか、会社に届く郵便物や請求書はどう処理するのかといったことです。これまでは出社している社員がリカバリーしていたことが、明らかになったのです」

それでも多くの社員は、テレワーク主体の働き方をおおむねポジティブに受け止めている。5月に働き方改革プロジェクトが実施したアンケートでは、Afterコロナでも今の働き方を継続させたいと答える社員が半数以上を占めた(図2)。

「統合前から働き方改革を進めてきた情報機器部門はともかく、病院営業が主体となるヘルスケア事業部門でもテレワークを希望する人が過半数を超えたのは意外でしたね」

ちなみに望ましい在宅勤務とオフィスワークの比率を尋ねたところ、4:1と答えた社員がもっとも多かった。コロナ以前の働き方と比べ、比率が完全に逆転した形になる。

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