J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年11月号

企業事例2 NTTコムウェア ルーチン業務を削減する技を伝え思考業務へのシフトを狙う

業務過多の課長からは、業務を外すか圧縮しなければ、本来求められる戦略策定や人材育成等の思考業務にさらに力を注ぐことは難しい。NTTコムウェアでは、業務効率化のために職場ですぐに実践できる、ルーチン業務削減の技を伝授。 さらに人材育成、特に現場OJTの実践を主査クラスに移管することで、課長の時間を生み出した。

三尾 和幸 氏 >> 総務人事部 HCMセンタ 担当課長

NTTコムウェア
1997年9月創業。NTTのソフトウェア部門を事業化して設立。IPネットワーク技術やミドルウェア、オープンソースやクラウド、セキュリティ技術の分野など、幅広い実績と豊富なノウハウを持ったシステムインテグレータ。
資本金:200億円、売上高:1937億7400万円、従業員数:5293名(2012年3月31日)

[取材・文] = 赤堀たか子 [写真] = NTTコムウェア提供、弊誌編集部

ルーチン業務を削減し思考業務へのシフトを図る

NTTコムウェアで課長層向けの研修内容を見直すきっかけとなったのは、社内アンケートだった。「組織としての健康状態を調べたところ、管理職の問題として、“マネジャー層が疲弊している”、“仕事が多重化しマネジメントができていない”、“人材育成ができていない”などの問題が見えてきました」(総務人事部HCMセンタ三尾和幸担当課長、以下同じ)

たしかに、管理職は、オーバーフロー気味だった。「セキュリティ管理やCSR 推進など“本来業務”の拡大に加え、勤怠管理、決裁など、システム投入自体も課長自らが行わなければならないものも多い。さらに突発的な仕事や特命を任せられたりと、とにかく課長は業務が多いのです」

課長層に期待していることは、人材育成や戦略の企画立案などの思考的な業務の遂行だが、現実的には、緊急性の高い日々のルーチン業務に追われ、こうした思考的業務は、後回しになってしまっているのだ。「 イメージではありますが、課長の日々の仕事を見た時、戦略策定や人材育成などの思考業務は、全業務量の3割程度で、残りの7割は、事務処理などの作業的業務が占めているのではないでしょうか」

だが、これ以上課長の負荷を増やすことはできない。そこで、三尾氏は、思考業務へシフトさせるために、日常業務の効率化と業務削減を図った。

課長の時間をつくる研修と“虎の巻”

まず、2009年度に教育研修全般を見直し、課長向けの研修内容も刷新した。

それまでの課長研修は、新任課長研修と、既任課長を対象にした3年ごとに振り返りを実施するマネジメント強化研修の2つ。

これまでの新任課長研修は、講師1人につき、受講生は40 名以下の少人数で、マネジメントについて徹底的に考え、議論するもの。参加者の評判は良かったが、研修実施から数カ月後にモニタリングすると、研修で学んだ内容が職場で実践されていないという問題が浮き彫りになった。

そこで、三尾氏は、従来の研修とは全く別の観点から新任・既任両方の課長研修を見直した。応用的なマネジメント論を議論する前に、課長の仕事のやり方を効率的・効果的に改善するための具体的なノウハウを伝授しようと考えたのだ。これにより、ルーチン業務に割いていた時間を思考業務に当てられるようになることを狙った。

「 考えることは重要ですから、課長以外の研修では、受講生に考えさせ、自ら答えを導き出してもらっています。ですが、時間のない課長は、研修の場であれこれ策を考えるより、効果が検証済みの技(答え)を学び、それを実践したらどうなるかを考えたほうが、行動が変わりやすい。よく研修で“気づきを与える”といいますが、気づきだけでは実践につながりません。具体的なテクニックを教え、“職場に戻ったら、ぜひやってみたい”という気にさせ、実際に職場で業務改善に取り組むことが肝心だと考えています」

三尾氏が“答え”として選んだのは、『課長のスキル70』(小倉広/著、徳間書店)。これをテキストにして、「チーム作りのコツ」、「会議の進行のスキル」、「プレゼンスキル」など、実際に仕事に役立つ70のスキルをそのまま教えてしまうのだ。研修では著者の小倉氏が講師になり、失敗談も含めて紹介。難しくなくルーチン業務の圧縮に役立つ点が受講生にも好評だという。

課長業務を効率化させる2つめの施策が、課長業務マニュアル(写真)。

課長の管理者としての仕事は、勤怠管理、予算管理、セキュリティ管理など、カバーする範囲が広い。したがって、業務遂行上持っておかなければならない知識も広範にわたる。それらが全て頭に入っている人は少なく、まして新任課長となれば、なおさらだ。業務遂行上のルールは、規程集などに書かれているが、勤怠なら人事、予算なら経理と、分野によって情報のありかが異なる。わからないことが出てくるたびに、規程集を開いてみたり、他部署に問い合わせたりといった対応が必要になり、そうした細々とした手間が積み重なり、時間のムダが生まれる。

そこで、多分野にわたる決まりや覚えておいたほうがいいことを「課長の仕事」という観点から集めたマニュアル「課長業務虎の巻」を新任課長研修後からフォローアップ研修までの3カ月間で作成することにした。「自分たちでつくることで、マニュアルに対し愛着が湧きますし、作業を通じて知識もつきます。しかも、みんなが協力しながらまとめることで、横のつながりもできるのです」

2010年に最初の「課長業務虎の巻」を作成、その後は、毎年、マニュアルの使い勝手を検証しながら、改定版をつくっている。ちなみにこのマニュアルは、既任課長にも好評なため、社内イントラ上に課長限定で公開し、データをダウンロードできるようにしているという。

メンタリング制度を改定新人のOJTを課長から主査へ

業務効率を高める3つめの取り組みが、権限委譲の推進だ。「評価に直結しにくい部下育成やOJTは、課長自身も含め、みんなが課長の仕事だと認識していました。しかし、課長は業務に手一杯でOJTは手薄になりがちです。そこで、係長に相当する主査・スペシャリスト(SP)クラスの仕事として、明確に認識させることで、育成の充実と課長業務削減の両方を実現させました」

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