J.H.倶楽部

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Learning Design 2020年01月刊

インストラクショナルデザイナー 寺田佳子の学びのキセキ 第10回 ドローンパイロット・髙梨智樹さん 「空を飛ぶ夢」の叶え方

人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。

ドローンパイロットの髙梨智樹さんは、16 歳でレース・デビューを果たした後、国内外のドローン大会で数々の成績を収めているプロフェッショナルです。
レースだけにとどまらず、父親とともに会社を興し、操縦や空撮を幅広く手掛ける彼の原動力とは。
かつて大空に憧れた少年は今、ドローンの未来までも見据えていました。

Interviewee Profile︱髙梨智樹氏
1998年生まれ。2016年「World Drone Prix 2016 Dubai」、2018年「DRONE SPORTS CHAMPIONSHIP2018」など、国内外のドローンレースで数々の実績をもつ。
18歳のときに父親とともにドローン専門会社スカイジョブを設立。
新型ドローン開発のテストパイロット、警察への講演会、災害時の情報収集活動への協力など、活動は多岐にわたる。

Interviewer Profile︱寺田 佳子氏
インストラクショナルデザイナー。IDコンサルティング代表取締役。ジェイ・キャスト常務執行役員。日本eラーニングコンソシアム理事。熊本大学大学院教授システム学専攻講師。
ICTを活用した人材育成のコンサルティングの他、リーダーシップマネジメント、プレゼンテーションセミナーなどの講師として国内外で活躍。
『学ぶ気・やる気を育てる技術』(日本能率協会マネジメントセンター)他、著書・訳書多数。

プロフィールこぼれ話★10 講演や授業では聴き手の「空
気を読む」ことが大切。講師と聴衆の呼吸を整えることで
情報が上手く伝わることをピラティスで学びました。

写真/矢部志保

01 大空との出会いが運命を変える

ウィィィィィーン!

その華奢な機体からは想像できないほどの豪快なプロペラ音とともに、レース用のドローンがクリスタル・ブルーの空へ飛んでいく。

いや、飛ぶというより、まるで天と地の間を瞬間移動しているような、目にもとまらぬ速さである。その華麗な飛行は、

「うわわわわ~!」

「すごぉぉぉぉ~い!」
と、空に向かって叫ぶしかないほど、美しく感動的である。

このドローンを操縦しているのが、今回のお相手の髙梨智樹さん、21歳。レース・デビューは16歳のとき。その後わずか半年の間に国内大会で優勝し、世界大会にも出場して一躍注目の人となった、日本のトップ・ドローン・パイロットである。

その智樹さんの自宅の床の間には、様々なトロフィーや賞状が所せましと並べられている。レース・パイロットとしてだけではなく、レースの腕前を生かして、産業用ドローンでも数々の「日本初」の空撮を成功させてきた実績の証である。

しかし、

「賞状は、ぼくにとってはただの紙でしかないんですよ」

えっ、どうして……?

そのわけは、小学生のころにさかのぼる。

智樹さんは体が弱く、ほとんど学校に行けなかった。授業が始まると、強い吐き気に襲われるからだ。勉強に集中できないし、同級生とはしゃぐ余裕もない。人と接すること、話すことが苦手な少年だった。

ただ、好奇心と集中力は並はずれていた。

「目新しいものは、いち早く手に入れて、自分の目で確かめてみないと気が済まない。『どうして、そうなのか』としくみや理由が知りたくて、いろいろなものを分解しましたね(笑)」

そんな智樹さんに、父は1台のラジコン・ヘリコプターを与えた。家に閉じこもりがちだった息子が外に出るきっかけになれば、という想いからである。

そのラジコン・ヘリコプターが、智樹さんに「空を飛ぶ夢」を教えてくれた。大空を見上げ、ラジコンを操作しながら、いつしか「ぼくも自由に空を飛んで、広い世界を見てみたい」という想いが大きくなっていたのである。

「体が弱い」「勉強ができない」本当のわけを知ったのは、なんと中学3年生になってからだった。学校の先生に勧められた検査の結果、読み書きに大きなストレスを感じ、体に不調をきたす「読み書き障害」とわかった。貴重な賞状がただの紙にしか見えないのは、この障害のためである。

それまでも苦しかったでしょうけれど、障害という診断はもっとショックだったでしょう?

「いえ、『どうして、そうなのか』がわかってホッとしました。それまで、ぼくは勉強ができない子なんだと、思い込んでいましたから」

長い間モヤモヤと視界を遮っていた霧が晴れ、澄みわたった青空をあおぐような気分になったそのころ、智樹さんは大きな転機を迎える。

ドローンとの「運命の出会い」である。

02 戦えるものを見つけた

自由自在に空を舞うドローンが撮った映像を初めて見たとき、智樹さんは「これだ!」と飛び上がった。あの「空を飛ぶ夢」が、そこに映っていたからだ。

人一倍好奇心が旺盛な智樹さんである。すぐにでもドローンを作ってみたくて、たまらない。しかしまだ、ドローンが今ほど普及していない時代。どうやって作るのかも、どれくらい費用がかかるのかもわからない。

そのとき、背中を押したのが父の一言である。

「やってみたら、いいじゃないか」。

「父はいつも、『ダメかもしれなくても、やりたいことはやってみなさい』という人なんです」と智樹さん。

「たとえば小学生のころ、パソコンを使い始めたときも、子どもだからと制限はせず、自由に閲覧させてくれました。何が安全で何が危ないのか、自分で経験しながら学べばいいと考えていたのでしょうね」

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