J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

特集│ OPINION 1 採用・育成・エンゲージメント領域に注目 ハイパフォーマー育成につなげる 最新のHRテクノロジー

最近、ますます存在感を高めているHR テクノロジー。今、テクノロジーはどこまで進化しているのか。
今後伸びる分野とは。最新トレンドと今後の展開を慶應義塾大学大学院の岩本隆氏に聞いた。

profile
岩本 隆(いわもと たかし)氏
慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 特任教授
東京大学工学部金属工学科卒業、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。
外資系グローバル企業での研究開発、組織マネジメントの経験を生かし、新産業創出にかかわる研究を進める。
ドリームインキュベータ特別顧問、山形大学産学連携教授、一般社団法人日本CHRO 協会理事などを兼務。

[取材・文]=谷口梨花

HR テクノロジー市場成長の背景

HRテクノロジー市場は、ここ数年で急激に成長している。特徴的なのはベンダーの増加だ。現在日本だけでも400社くらいあるといわれており、HRテクノロジー領域のベンチャー企業は非常に勢いがある。

ユーザー側にも、最近になり動きが見られてきた。なかでも導入が広がっているのは中小企業だろう。これまで人事システムを使っていなかったゆえに新たなシステムの導入がスムーズであり、また、クラウド型で低コストのシステムの増加が中小企業の利活用が増えた理由だと考えられる。

一方、大企業はすでに旧来型の人事システムが入っているうえに、採用や労務管理などの分野ごとにベンダーが異なるといった問題があり、導入がスムーズにいっていないケースが散見される。聞いたところによると、人事だけで10社以上のベンダーが入っている企業もあるようだ。このような背景から、日本の大企業は、欧米のように全面的にクラウド化して一気に入れ替えるのではなく、一部の機能でトライアル的にデータを集めて分析を始める企業が多い。

いずれにしても、ここ数年でHRテクノロジーは急速に広がりを見せているといえるだろう。

ハイパフォーマーの育成にHRテクノロジーを活用

HRテクノロジーの存在感が高まっているのは、経営層の意識変革の影響も大きい。私はHRテクノロジーのイベントでよく講演を行っているが、最近、大企業のトップを会場で目にすることが多くなっている。

日本企業の人事は、これまで良質な「金太郎飴」を育てることに終始してきたが、世の中がこれだけ変化すると、金太郎飴ではビジネスが成り立たなくなってきた。最近、経営層から「ハイパフォーマーを育てよう」という声がよく聞かれる背景にも、人材に対する強い危機感があるのだろう。

かつては人事担当者がHR テクノロジーを導入したくても、経営層の理解が得られないケースが多かったが、最近ではトップダウンでHRテクノロジーの導入を進める企業が増えている。つまり、HR テクノロジーを活用してハイパフォーマーを育成しようというのである。

ハイパフォーマーに求められるスキルやコンピテンシーは各社異なるだろう。多くの企業では、採用や育成、評価などに関する過去の膨大なデータが蓄積されている。それを基に、どんなタイプの人材が自社のビジネスにおいてハイパフォーマーになりそうかを議論する必要がある。また、自社にとって必要なスキルやコンピテンシーの棚卸しをして、データを集め始めている企業も多い。

市場のトレンドとは

HR テクノロジー市場で近年伸びているのは、採用や育成、エンゲージメント領域だ。これらは以前から機能として存在しており、あらかじめ予算がついているので導入がスムーズな領域でもある。最新トレンドと今後の展開予測を述べていきたい。

❶採用領域

採用領域は、世界的に見てももっとも大きいHR テクノロジーのマーケットになっている。HR テクノロジー全体のなかでも、20%以上を占めるといわれる。

グローバルにおいて、採用は“Talent Acquisition”という位置づけだ。プロスポーツ選手のスカウトをイメージしてもらうとわかりやすいが、有能な人材を世界中から探して獲得するのだ。そのプロセスは細分化されており、それぞれのプロセスでテクノロジーを活用する“TAテック”も盛況だ(次ページ図1)。海外では、TAテックに特化したカンファレンスも行われている。

有能な人材を発掘する「ソーシング」では、インターネットのキーワード検索のノウハウを活用して、面接まで惹きつける。また、有能な人材に魅力を感じてもらうためには、「採用ブランドの構築」も不可欠だ。企業ブランドと採用ブランドは一致しないことが往々にしてあり、採用ブランドを高めるツールも出てきている。他にも、採用プロセスを自動でマネージするCRM(採用候補者管理システム)や面接では、デジタル面接プラットフォームの「HireVue」を使ったデジタル面接などがある。

このように、TAテックだけでも非常に多くの種類があるので、欧米ではアーキテクチャーを設計して、各プロセスに最適なツールを選定したり、各プロセスで取得したデータをつなげたりするベンチャー企業も出てきている。

日本でも多くの企業で新卒採用を行っているので、採用領域でのテクノロジー活用は広がりやすいだろう。特に大企業では、イノベーションを起こすために、いま自社にはいないような人材を採りたいというニーズがある。したがって、ほしい人材を論理的に定義し、アドテクを活用して採用ページを整備、採用ブランドを変えていくアプローチは有効だろう。本当にほしいハイパフォーマーを探しに行くソーシングの機能などは、日本でも今後ますます重要性が高まっていくのではないだろうか。

❷育成領域

育成も、昔から研修などに予算がついているため、HR テクノロジーの活用が進みやすい領域だ。e ラーニングやLMSのしくみは昔からあるが、どう学べばスキルが身につくのかについては、理論化できているとはいえない。

今後は、教える側ではなく学ぶ側の視点に立った“学び”を構築する動きが広がるだろう。どのような順番で学べば身につくのか、どのように学ぶと人は育つのかなど、データを活用する余地は大きい。

リーダー育成などアナログ的な部分も残るとは思うが、この分野はベンチャー企業も勢いがあるので、今後伸びていくだろう。

❸エンゲージメント領域

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