J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年11月刊

特集│CASE4│リコージャパン 人事こそ実験をしよう 科学的人事と HRテクノロジーを活用して ESとCSの徹底的な追求を目指す

リコーグループの国内販売会社であるリコージャパンでは、
近年積極的に科学的人事やHR テクノロジーの活用に取り組んでいる。
最新の活用事例や今後の展望について聞いた。


山田裕治氏 リコージャパン 常務執行役員 人財本部 本部長
高須彰一氏 リコージャパン 人財本部 人財開発室 BP教育グループ 兼 HR・EDTechサポートグループ リーダー

リコージャパン株式会社
1959年創立。リコー製品を中心とした商品・サービスの提供を通じて、顧客の経営課題や企業価値の向上に貢献。
全国399の営業所と426のサービスステーションを拠点に、“従来の一般オフィス”から、様々な業種の現場を含めた“ワークプレイス”、さらに“社会”まで価値提供の領域を広げている。資本金:25億円
売上高:6,643億1,500万円(2019年3月期)
従業員数:1万8,240名(2019年4月1日現在)

[取材・文]=谷口梨花

「科学的人事」と「HRテクノロジー」導入の背景

リコージャパンでは、2018年から積極的にHRテクノロジーを導入・活用している。また、様々な人事データの統計学的な分析、活用を「科学的人事」と名づけ、HR テクノロジーの導入以前から、人事分野におけるデータ活用を進めてきた。

「背景にあるのは、リコージャパンの経営の軸であるES とCS の徹底的な追求です。社員が生き生きと誇りをもって働き、お客様から感謝される顧客価値企業を目指して、2017年から働き方改革を進めてきました。科学的人事やHR テクノロジーはそれを実現するための手法です」

そう話すのは、常務執行役員人財本部本部長の山田裕治氏である。

ES とCS の徹底的な追求にあたっては、社長自ら全国各地に赴いて社員とダイレクトコミュニケーションを行ったという。そこで明らかになった生産性や人事制度などの課題に対して、2017年から広義の働き方改革に着手。全国399の営業所、426のサービスステーションで働く1万8,000人以上の社員を対象に、生産性を向上させるための業務プロセス改革や、多様な人財の活躍を促す人事制度改革などに取り組んできた。

「人事に求められることは、社員のモチベーションやエンゲージメントを高めること、そして個の特性や能力が活かせる場を提供することです。しかし、これだけの人数の個別最適を、人事担当者の勘と経験による属人的な判断で実現することは難しいでしょう。1万8,000人のモチベーションやエンゲージメントの状況を適時適切に把握し、能力を活かすベストな場を提供し、経営戦略と個別最適を同時に実現するには、科学的人事やHR テクノロジーの活用が不可欠なのです」(山田氏)

「デジタル」と「アナログ」双方を重視

ダイレクトコミュニケーションに象徴されるように、同社ではアナログHR(肌感での現場情報把握)とデジタルHRを組み合わせて活用している(図1)。

「アナログHR と科学的人事やHRテクノロジーを効果的に組み合わせることで、経営戦略と個別最適の同時実現が加速できると考えています。社員とあまり話さず、現場がわかっていない経営陣にES 調査の結果データだけを見せても際限のない分析で終わるでしょうが、ダイレクトコミュニケーションで現場の実態把握ができていれば、認識共有も改善策の検討もすぐにできるからです。また、ダイレクトコミュニケーションは人数や回数に限界があるので、そこで取りこぼしている課題をES 調査で補うことも可能です。科学の力は活用しますが、社員と向き合うアナログも重視しているのが弊社の取り組みの特徴です」(山田氏)

同社では、個人や組織の状態の見える化と施策効果の確認、個々の特性や価値観に適合する仕事環境や成長環境の整備に、科学的人事やHRテクノロジーを活用している。最新の活用事例を紹介したい。

科学的人事の活用事例

科学的人事の目的は、各種データの統計的分析を行い、論理的・客観的な結論を導き出すこと。主に以下の分野で活用している。

❶ES とCSの関係の可視化

まずは、同社の経営の軸であるESとCS に関する分析、可視化である(図2)。

「社員の満足度を測るES 調査と取引先に満足度を聞くCS 調査のデータを総合的に分析してみたところ、相関があることがわかりました。また分析の結果、ES が高まった支社ではCS も高まる傾向があることもわかりました。この結果は仮説どおりでしたね。ES とCS の追求は弊社の経営の軸でもありますので、可視化して確認することは重要です」(山田氏)

❷日常のコミュニケーションの可視化

また、日常のコミュニケーションについても社員アンケートをとおして可視化。その結果と、たとえば評価への納得感の関係を探っている。

「評価への納得感は評価面談が鍵になるという仮説をもっていましたが、実際は上司と部下の日常のコミュニケーションの方が影響していることがわかりました。たとえ低い評価であっても、日常のコミュニケーションが十分にとれていたら、評価に納得できるというのです。この結果からも、最近話題の『心理的安全性』がいかに重要かわかります」(山田氏)

また、コミュニケーションの手段についても分析を行い、1on 1ミーティングの回数が多いほど職場の風通しの良さにつながること、時間は30分がもっとも効果的だということもわかったという。

❸ ESと360度評価の関係の可視化

ES が上位の支社と下位の支社で、360度評価のどの項目に差が出てくるのかも統計的に分析している。

「支社長クラスで上位と下位の差が大きかったのは、『変革的行動力』や『公平性』といった項目でした。一方、課長クラスでは『部下育成』などの項目で差が大きくなります。このように統計情報を活用することで、個人や組織の状況が可視化され、リーダーシップ育成などに活かすことができるのです」(山田氏)

HRテクノロジーの活用事例

HRテクノロジーは2018年度から導入し、今後本格的に展開していく段階にある。採用や人材育成、業務効率化の分野で活用していく予定だ。現在試行中の主な事例が下記である。

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