J.H.倶楽部

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Learning Design 2019年05月刊

インストラクショナルデザイナー 寺田佳子の学びのキセキ 第6回 起業家・角田千佳さん 0から100 をつくる発想の力

人は学べる。いくつになっても、どんな職業でも。
学びによって成長を遂げる人々の軌跡と奇跡を探ります。


エニタイムズの代表取締役社長兼CEO である角田千佳さんが、ご近所さんに「お困りごと」を解決してもらえるスキルシェアサービスを立ち上げたのは、まだシェアリングエコノミーの概念すらなかった6 年前のことでした。
「子どものころは国連職員を目指していた」と話す角田さんが、地域のつながりを生むサービスを立ちあげた背景には、どんな気づきがあったのでしょうか。

Interviewee Profile︱角田千佳氏
株式会社エニタイムズ 代表取締役社長兼CEO。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、2008 年に野村證券に入社。
その後サイバーエージェントに転職し、PR 事業を手掛ける。
2013 年、エニタイムズを創業。同年末に、家庭の「お困りごと」を依頼・請負できるシェアリングサービス「ANYTIMES」をリリースした。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会の理事も務める。

Interviewer Profile︱ 寺田佳子(てらだよしこ)氏
インストラクショナルデザイナー。IDコンサルティング代表取締役。
ジェイ・キャスト常務執行役員。日本eラーニングコンソシアム理事。
熊本大学大学院教授システム学専攻講師。
ICTを活用した人材育成のコンサルティングの他、リーダーシップマネジメント、プレゼンテーションセミナーなどの講師として国内外で活躍。
『学ぶ気・やる気を育てる技術』(日本能率協会マネジメントセンター)他、著書・訳書多数。

プロフィールこぼれ話★6 違う国、違う文化の人とも一瞬
で仲良くなれるダンスが好き! アフリカでの講演冒頭では「恋
するフォーチュンクッキー」を踊り、会場は大盛りあがりでした。

写真/矢部志保

01 将来は国連で働きたい!

「Anytimes(エニタイムズ)」……。「いつでも、どんなときも、どんな世の中でも」という意味だ。

実はこれ、「ちょっと手伝ってくれると助かるなぁ」とため息をついている人と、「それならおまかせっ!」とやる気満々のご近所さんをインターネットでつなげる、地域密着型シェアリングサービスを運営する会社の名前である。

6年前にその「エニタイムズ」を立ちあげ、モノではなくサービスをシェアするといういままでにない「助けあいのネットワークづくり」で注目されるのが、代表取締役社長の角田千佳さんだ。その斬新なアイデアは、いつ、どんなとき、どんな場所で生まれたのだろうか?

角田さんがはじめて「こんな人になりたい」と憧れたのは、かの天才科学者ガリレオ・ガリレイ。小学1年生のときのことである。

「学校の図書館のどの棚にガリレオの伝記が置いてあったか、いまでもはっきり覚えているんです」というから、何度も何度も読んだのだろう。

いったいガリレオのどこに、そんなに惹かれたのかしら?

「既成概念にとらわれない自由な発想や、『それでも地球は回っている』と信念を貫くところがすごいなぁ、って」

周りの友達は、かっこいいサッカー選手や人気のパティシエを夢見る年ごろである。歴史上の人物をまるで憧れの先輩のように慕う角田さんは、ずいぶん想像力豊かな少女だったに違いない。

しかし、小学校を卒業するころには、別の憧れの対象ができていた。

「卒業文集には『将来は国連で働きたい』って書いたんです」

きっかけは、これも1冊の本だった。

ある日手にした、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんの著書。学校の教科書で学んだ「戦争」は昔の悲しい出来事で、今の自分には関係のないことだと思っていたが、その本を読んで愕然とした。

「今も地球のどこかで紛争や虐殺が起こっていて、家を失い、家族を失い、身も心も傷ついた人々が難民となって逃げまどっているなんて!」

国連の高等弁務官としてクルド人の支援を始めた緒方さんは、それまでの「国境を越えた避難民だけを支援すべき」という既成概念に疑問を呈し、「国境を越えたかどうかで支援を決めるのはおかしい。目の前の命を助けるために少しでも早く動くことが大事」と活動方針を変更した。さらに、指示するだけではなく、自ら危険な紛争地域に足を運び、難民たちが自立して暮らせる“まちづくり”の先頭に立って働いていたのである。

「日本人の、それも女性で、こんなに勇気と行動力のある人がいるんだわ。私も……」

彼女のようになりたい……。

それから角田さんは折に触れ、先生や友だちに、「将来は国連職員(国際公務員)になって、開発途上国の人たちが幸せに暮らせる“まちづくり”を支援するの」と語るようになる。

02 ビジネスがもつ可能性

高校時代はボランティア、大学時代はチアダンスに熱中しつつ、国連職員になるという夢を育んでいた角田さん。だが、大学卒業後に就職したのは、なんと日本を代表する大手証券会社だった。

あら? 国連への夢、あきらめたのですか?

「いえ、国際公務員になる前に、一度は民間で働いた方がいいと考えたのです。できれば、途上国支援に役立つ金融について学べるグローバルな企業がいいなと」

本店資産管理部に配属され、株や債券の売買を扱う営業職に就いたが、入社半年でリーマンショックが起こるという激動の社会人1年目。巨大組織を動かす強力なマネジメントのパワーと、現場を牛耳る「暗黙のルール」に圧倒されそうになりながらも、必死に目の前の仕事をこなす毎日だった。

さぞかし、目まぐるしい毎日だったのでしょうね!

「確かに、ゆっくり考える時間もないほどの怒涛の日々でしたが、様々なお客様と接するなかで、身近な課題に目が向くようになりました」

それまでは、「解決しなければならない課題は、海の向こうの開発途上国や遠く離れた紛争地域にある」と考えていた。しかし、高齢のお客様と接するうちに、少子高齢化が急速に進む日本にも、深刻な課題が山積していることを発見したのである。

そして、こう考えた。そもそも、この日本で「まちづくり」がちゃんとできているのか。むしろ地域や人のつながりは希薄化しているのではないか。もしかしたら、「支援が必要なのは開発途上国」という既成概念にとらわれているのは、私自身なのかもしれない……。

また、IT 企業が次々株式公開し、社会の注目を集めているのを目の当たりにして、ビジネスの変化の速さと可能性の大きさにも魅了された。ビジネスで途上国を支援する、という選択肢もアリかもしれない……。

そんなことを考え始めたのは、証券会社での仕事が3年目を迎えたころ。IT 企業に転職し、PRプランニングという、まったく新しい分野に飛び込んだ。

で、どうでした?

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