J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年08月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 「知は体で生かせ!」 “現場力”という会社の底力の鍛え方

トラック輸送、鉄道輸送、船舶輸送、物流センター等、物流を中心に幅広く事業展開するセンコー。流通、住宅、ケミカルの各業界向けの物流で抜きん出ているだけではない。「物流」の枠を越え、商流、流通情報といったあらゆる領域でソリューションサービスを提供し続けている。仕事に「枠」を設けず、イノベーションを起こし続ける独自の人材育成について、福田泰久社長に伺った。

福田 泰久(Yasuhisa Fukuda)氏
センコー 代表取締役社長
生年月日 1946年8月23日生
出身校 関西大学経済学部
主な経歴
1969年4月 入社
1993年4月 総合経営計画室長
1993年6月 取締役 就任
1995年4月 大阪統括営業部長
1997年6月 常務取締役 就任
1998年11月 第2営業本部長
2003年4月 ロジスティクス営業本部長
2003年6月 取締役副社長 就任
2004年4月 営業担当
2004年6月 代表取締役社長 就任
現在に至る

センコー
1946(昭和21)年7月の設立以来、自動車、鉄道利用、海上等の運送事業や、倉庫業等の各種許認可の取得、輸送体制の充実や拠点の拡充を図りながら積極的に事業展開。暮らしと産業を支える総合的な流通ソリューションの提供をめざす。
資本金:205億2,100万円、売上高:2,935億3,400万円、従業員数:8,889名(いずれも2013年3月期)

インタビュアー/西川 敦子 写真/太田 亨

物流の枠を超え成長を続ける

――貴社は物流大手ですが、従来の物流企業の枠組みを越える「流通情報企業」や「ムービング・グローバル」という言葉を掲げ、自社の方向性を示しておられます。「物流」という領域を越えていこうというお考えは、どのような歴史に根ざしているのでしょうか。

福田

遡ってみると、当社が何度か変革の舵を切っていることがわかります。最初の変革は社名を「扇興運輸株式会社」から現在の「センコー株式会社」にした時です。「運輸」を取って、さらにカタカナにした。1973年、私が入社4年目の時です。戦前は旧日本窒素コンツェルンに属していましたから、戦後も、そこから誕生した新日本窒素(現JNC)さんや旭化成さん、積水化学工業さん、積水ハウスさんの輸送業務などを引き受けてきました。だが、安定した顧客環境だけに頼っていてはいけない。いろいろな顧客、多彩な業務に挑戦していこうじゃないかと。そこで輸送や工場内作業だけでなく、物流センター業務や各種付帯業務、さらには商流まで含めたサービスや商品を広く提供できる会社をめざそうと考えました。社名変更は、いわばその決意表明のようなものですね。物流センター事業展開、また商流や流通情報などの業務が本格化したのは、1983年頃です。当時、流通系のお客様の物流改革ニーズやご相談が多かったものですから、我々がITやコンピュータを駆使した新しい物流システムやサービスを手掛けるようになっていきました。そこからですね、「流通情報企業」を意識するようになったのは。

――「流通情報企業」とは、どのような企業を指すのでしょうか。

福田

当社では、流通全般にかかわる情報をリアルタイムで収集・分析し、ITを駆使したシステムと融合した流通ソリューションサービスを提供していますが、これが「流通情報企業」です。というのも、当社はメーカーと違って、形となった商品はありません。お客様の販売や製造のお役に立てる、またサポートできるサービスや商品をつくり出し、それを提供することで、商売が成り立っています。ですから、お客様に言われたことだけをするのではなく、我々物流サイドから、お客様の効率化、合理化につながるいろいろなご提案をしなければなりません。

お客様が流通在庫の問題でお困りなら、少ない在庫で販売機会を逃さない商品供給システムを、最適立地の物流センターを使いご提案する。さらにお客様のニーズや流通形態に合わせ、さまざまな付帯サービスも考える。アパレル商品であれば、値札やタグ付けといった流通加工、返品商品のしわ取りや再生なども行う、といった具合です。

――最近は、全国各地に大型の物流センターを開設していますね。

福田

我々は、物流センターというハードに、いろいろなソフトやソリューションを組み合わせ、お客様のベストパートナーをめざしていきたいと考えています。

知識を体で覚え、生かす独自の実践型教育とは

――物流産業は労働集約型といわれます。業務内容を拡大し続ける御社にとって、人材育成は成長の源泉ではないでしょうか。

福田

ええ。事業展開の原動力である「人材」の能力や意欲を最大限に引き出し、組織化していかなければなりません。そこで今年、2013年に、この育成機能の強化・充実を図るため、「人材教育部」を新設しました。現場第一線のリーダークラスの育成、上級マネジメント層まで含めた能力開発、グローバル人材の育成など、自己啓発、OJT、Off-JTの効果的連携で取り組む考えです。特に、我々が強い現場、卓越した現場をつくるには、事業に精通した人材のプロ集団化、プロ技術の発揮が重要です。当社の場合、事務や管理などを行う事務系社員と、トラック配送や倉庫内などでオペレーション作業に携わる現業系社員に分かれます。私が入社した当時は、教育といえば事務系を対象にしたものばかりで、現業系の教育が不十分だったと思います。しかし、誰が会社の稼ぎを生んでいるかといえば、間違いなく現業系社員です。彼らをどう教育するか。ここに力を入れなければいけないのではないかと、実は入社した頃から感じていました。

――現業系向けの人材育成はどうあるべきなのでしょうか。

福田

現業系に限りませんが、教育というのは知識だけを詰め込んでもダメです。頭で覚えたら、実践する。体に覚えさせることです。本を読んで、ゴルフのティーショットやフック、スライスのテクニックを学んだだけでは、上達しないのと一緒です。トラックの運転術もこれに通じるところがあります。たとえば、セミトレーラー(連結車両)後退時のハンドルは一般車両と操作方向が逆です。右に回る時はハンドルを左に回す。左に回る時は右に回す。頭でなく、体に叩き込んで訓練し、マスターするしかありません。

営業も同じです。研修で一通り知識を学んだところで、場数を踏まなければ一人前になれません。失敗してお詫びしたり、時には毅然たる態度で交渉に臨んだりと。どんな仕事でも、まず頭で覚え、それからどんどん体で実践し、技術やノウハウを身につけていく。そして「オオッ」とうならせ、人を感動させることができれば、プロとして認められると思います。

――その人材育成方針を体現しているのが、滋賀県東近江市の教育センター「クレフィール湖東」ですね。

福田

クレフィール湖東は、当社の現場力を強化させるコア施設です。1996年に開設し、翌1997年には、国際交通安全学会から国際交通安全学会賞もいただきました。開設の発端は1987年。当時の森川社長が「2000年に売上2,000億円を達成する」というスローガンを打ち出しました。その頃の売上が1,000億円でしたから、売上を倍にする。つまり、現場で働く人も倍に増やさないといけません。そこで現業系社員、特にリーダー層を徹底的に教育・育成しようということになったわけです。彼らが訓練し、学んだことを、現場に帰って部下一人ひとりに教えてくれれば現場全体に浸透していきます。

――実技研修のための充実した施設があるとお聞きしています。

福田

さまざまな走行シーンを実践的に体験できる大型交通訓練コースがあります。制動訓練コース、回避訓練エリア、高速周回コースなど、普段、公道では体験できない「車と人間の限界」を体感し、危険感受性を高めながら運転技術を身につけることができます。また安全運転やエコ運転だけでなく、物流技能を磨いたり、プロ技術を伝承したりするための物流訓練施設もあります。

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