J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

Learning Design 2019年05月刊

特集│OPINION2│まずは“自分の羅針盤”を見いだせ! 自律的にキャリアを築くため 求められる「学び」とは

不確実な現代、重要なのは一人ひとりがキャリア・オーナーシップをもち、“ ありたい自分” を見据えて自らのキャリアを拓いていくこと。
キャリア教育研究家の橋本賢二氏は、その“ありたい自分”を見つけるために欠かせないのが、「学び」だと話す。
人生100年時代を生き抜くためのキャリアと学びの関係、そして学びの在り方について、話を聞いた。

profile
橋本賢二(はしもと けんじ)氏
キャリア教育研究家

2007年より人事院にて採用試験の見直しや人事院勧告の取りまとめの担当を経て、2015年より経済産業省に出向し、産業界の成長に資する人材育成に関する施策を担当。
2018年より人事院に戻り人材確保などを担当。
2019年1月より早稲田大学WASEDA NEO講師を兼ねる。
「キャリア教育研究家」として、主に人材育成や教育を専門に、これからの時代に求められる人材像や、キャリア教育の重要性を説く講演等も行っている。

[取材・文]=平林謙治

「ありたい自分」を探すために

人生100年時代、第4次産業革命、VUCA、働き方改革――。世のなかには、「変化」を促すキーワードが溢れている。「このままでいいのか……」という漠然とした危機感も、徐々にだが確実に広がりつつある。

しかし、働き方やキャリアを巡る個々人の具体的な動きは、まだまだ活発とは言い難い。人はそう簡単に変われないのが現実だ。

「危機感による“強迫”は、個人が変わるきっかけのひとつですが、それだけではなかなか変われません」

キャリア教育研究家の橋本賢二氏はそう指摘する。

「もうひとつ、大切なのは“共感”です。世のなかで刻々と起こっている変化や課題を、ただ情報として知るだけでなく、当事者意識をもって自分ごととしてとらえる。それが自分にどう関係し、どういう影響があるのかを自覚すると、人は心から行動変容を起こします。変化に対応して動く人と動かない人との差は、その変化に当事者意識を強くもてるかどうかで決まります。そして今後、その差はますます広がっていくでしょう」(橋本氏、以下同)

橋本氏は経済産業省でキャリア教育や人材育成に関連する施策を担当し、同省が18年3月に公表した『人生100年時代の社会人基礎力』の策定にも尽力した。

「不確実な時代のなかで、唯一確かなことは、これまでのような『教育→仕事→引退』という画一的な人生のモデルが、今後も続くことはなく、どうなるかわからないということです。国や企業は、モデルを示せなくなりました。モデルがないからこそ、『自分はどうしたいか』が決定的に重要になってくる。キャリア設計や能力の開発を会社任せにするのではなく、一人ひとりが自分の在り方に当事者意識をもち、納得のいくキャリアを自律的につくっていく――いわゆる『キャリア・オーナーシップ』の涵養が求められるのです」

まずは自分ありき。社会との関係のなかで、自分はどうありたいのか。そこを突き詰めたうえで、仕事と結びつければ、働き方やキャリアの磨き方も見えてくる。自分の在り方という羅針盤を見いだすことが、人生100年時代を生き抜く第一歩になると、橋本氏は強調する。

だが、「ありたい自分」を見つけるなんて、スキルを習得するより、はるかに難しいのではないか。そう思う人もいるだろう。

「難しくて当たり前。見つからないのが普通でしょう」と橋本氏。

「だからこそ、『学ぶ』んですよ。それを探し続けるために」

リフレクションと越境学習

「ただ漫然と、ひとりで悩んでいても、『ありたい自分』は見いだせません。よくWill、Can、Mustでキャリアを分析しますが、それらは助動詞にすぎません。自ら行動する動詞をともなうことで、新しい経験や体験を積んで、得られたフィードバックから自己を客観視して、内省を深めて学びへとつなげられるのです。必要なのは具体的な行動からの学びで、まさに経験学習です。そうして絶えず行動から自分自身を振り返ること以外に、『ありたい自分』へと至る近道はないでしょう」

先述した、経産省の『人生100年時代の社会人基礎力』においても、自らキャリアを切り拓いていくためには、自己をリフレクション(振り返り)しながら、「何を学ぶか」「どう学ぶか」「学んだことをどう生かし、活躍するか」の3つの視点を意識して、行動し続けることが必要と位置づけられている(図1)

「とにかく、どんな小さなことでも構いません。自己を振り返るなかで、少しでも自信がもてるものや興味があるもの、思いの強いものがあれば、それを学べる場に出かけてみたり、面白そうな活動や集まりに参加してみたりすることをお勧めします。ふだんの職場とは勝手が違う環境にあえて飛び込み、自分とはまったく違うバックグラウンドをもつ人々と真剣に向き合う。アウェイの方が、得られる学びは深いでしょう」

橋本氏が提唱するのは、いわゆる「越境学習」の重要性だ。具体的には、地域のボランティアやNPO 活動、趣味のサークルへの参加などが挙げられる。しかし、橋本氏は「もっと身近な場所、たとえばマンションの管理組合や子どものPTA の活動でも、本気で取り組めば大きな刺激になる」と言う。

そうした“越境先”では、本業で培った社内知が通用しなかったり、逆に、社内では当たり前のスキルが予想外に高く評価されたりすることも少なくない。越境学習は、自らの強み・弱みのリフレクションにつながる。

また、企業側から見ても、社外に学びを求める越境活動のメリットは大きい。個々の社員の能力を高めるだけでなく、同質化しがちな組織に知識や価値観、人的ネットワークの多様性をもたらし、イノベーション創出の契機にもなるからだ。

「そもそも企業が社員に提供できる学びは、業務に関連するスキルを養成するものぐらいに限られます。人生100年時代に、個人が何度でも学び直しながら、生涯活躍し続ける人材になるためには、企業も、多様な働き方を認めたり、兼業・副業の解禁などを通じて、社員の越境経験を後押しすべきでしょう」

学びのハードルが高すぎる

ビジネスパーソンの「学び直し」「越境学習」というと、多くの人が第一に連想するのは、大学や大学院への社会人入学だろう。ビジネススクールやロースクールの話題も一時期、メディアにさかんに取り上げられた。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,151文字

/

全文:4,301文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!