J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年09月刊

Learning Report from ATD 第2回「Science of Learning(学習の科学)」 〜ATD ICE 2018のテーマより〜

米国の人材・組織開発の専門組織ATDの日本支部ATD-IMNJ が、海外の新潮流を変革へのヒントとして解説します。

野原裕美 氏
ATD-IMNJ(インターナショナル・ネットワーク・ジャパン)理事

なぜテクノロジーが必要なのか?

「この研修、出席しないと(させないと)ダメですか? 受講を延期したいのですが」。苦労して準備した研修の実施を伝えたところ、研修対象者やその上司からこんな問い合わせを受けた経験はないでしょうか。人事部が提供する研修が入社後の学習機会のほとんどを占めていた時代には、会社が設定した研修へのリスペクトは高く、受講対象となった場合は、あらゆる予定を調整して参加するのが当然とされていました。

しかし、今は状況が全く変わっています。ATD ICE 2018においても、多様化した受講生の意識をどのように理解し、組織の方向性をどのように伝えて寄り添ってもらうか、そのためにテクノロジーをどのように活用できるかについて、多くのセッションで発表されていましたが、テクノロジーの浸透により社会人が学ぶ機会やツールは増えています。また同時に、従業員の多様性も高まっています。

なぜその研修が必要なのか、その研修にはどんな価値があるのか、研修の予算を決定する管理職や経営陣だけでなく、従業員からも問われる時代になっているのです。

これは研修に限った話ではありません。仕事そのものの目的や価値、意義も問われるようになりました。特に1982年以降に生まれたミレニアル世代は、自分の所属する組織が社会的大義を持って社会課題解決に貢献しているかについて、強い関心を持っています。※1

これまでも研修を設計する際にはSMART(Specific, Measurable,Attainable, Relevant, Timely: 明確、計測可能、実現可能、妥当、タイムリー)な目標設定が重要とされてきました。しかし、研修だけでなく仕事の意味そのものに強い関心が向く状況では、研修の目標設定の前に、その企業がどのようなミッションを掲げ、何を実現しようとしているのか、各仕事はそのミッションにどのように貢献するかを、受講者に理解してもらう必要があります。

社会、企業、個人のつながりをはっきりさせたうえで、改めて必要な知識やスキルを明らかにし、そのうち研修では何を習得し、勉強会やOJTといった学習機会には何を習得するのか、納得できるよう説明する役割が人材開発担当者には求められます。この前提が整って初めて、受講生の心が研修に向くのです。

人材開発担当者がすべきこと

以上を踏まえ、人材開発担当者は何をすべきか、「Science of Learning(学習の科学)」の観点から考えてみたいと思います。人材開発という職務に対する姿勢と、具体的な行動の面から見ていきましょう。

まず、基本姿勢として、人材開発担当者自身が常に学び続けることです。例えば、注目を集めるデザインシンキングやテクノロジーが、人材開発の領域で何を意味するのかを理解し、それを自分の組織でどのように活用できるのかを考え、必要に応じて関係者を巻き込むこと。

そして行動面では、(必ずしも研修だけではない)学習機会の分析・設計・開発・実行・評価(ADDIE)の各段階において、受講者視点で最適なアクションを取ること。例えば、学習者のニーズ分析も、単に不足しているスキルが何かを考えるのではなく、受講生だけでなく場合によっては社外の関係者やインフルエンサーの意見も取り入れ、自組織と学習者を取り巻く環境を文脈として把握すること。そのために活用できるテクノロジーを取り入れて、作業効率を高めること。

受講生の認識や状況について考えることも重要です。認知科学において、学習内容の定着を強化するには、表2の3つの条件が必要とされています。

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