J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年01月号

~『モヤハラ』セミナーレポート~ 管理職を悩ませる新型ハラスメント 『モヤハラ』の原因と本質を解明

2012年11月7日、東京・渋谷区の石山記念ホールで、『モヤハラセミナー』が開催された(主催:インプレッション・ラーニング)。
同セミナーは、パワハラに当てはまらない言動なのに「パワハラだ」といわれてしまう状況『モヤハラ』にどのように対処すれば良いのかをテーマに、企業の管理職層を対象に開催されたものである。
その様子を紹介する。

取材・文・写真/井戸沼尚也

当日は、インプレッション・ラーニングの鈴木瑞穂氏が講師を務め、冒頭に、企業の現場で実際に起きているという4つのエピソードが紹介された。その中の1つがこのエピソードだ。

自分のチームの報・連・相に問題があると悩む、上司のAさん。その原因はコミュニケーション不足にあると考え、部下の中のリーダー的な存在のBさんに声をかけた。『チームのコミュニケーションを良くするために、今後は毎月第3木曜を定例飲み会にする。明後日が第3木曜だから早速開始する旨、皆にも伝えてくれ、いいな』

このエピソードはパワハラか否かを鈴木氏が問うと、パワハラに「なる」・「ならない」で会場が1:2の割合に分かれた。

パワハラにならない派は「妥当な指導の範囲である」、パワハラになる派は「飲み会が時間外で強制ならばパワハラだ」というのが、その主な理由だ。

パワハラの定義を知る

前述のエピソードについて鈴木氏はこう説明した。「パワハラになる派の方々は、時間外と強制を理由にしていますが、たとえば『お客さんの都合で午後6時半から打合せなので東京駅に6時に集合しろ』という指示はパワハラになるでしょうか。おそらく、それは業務命令だと判断するでしょう。しかし、これも時間外であり強制です。ということは、時間外とか強制とかはパワハラの判断基準にはなりえないということではないでしょうか。では、前述のエピソードが厚労省のパワハラの定義に当てはまるかどうかを考えてみてください」

厚生労働省が2012年1月30日付で発表したパワハラの定義は次の通りである。「パワハラとは、同じ職場で働く者に対し、職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為をいう」

厚生労働省は、解釈の重要ポイントとして、業務上必要でかつ適正な範囲を超えない指示、注意、指導等は、たとえ相手が不満を感じたりしてもパワハラにはならないことを強調し、同時に、業務上の適正な範囲とは、業種や企業文化等により影響を受けるので、どこまでが業務上の訂正な範囲なのかはそれぞれの企業が考える事柄であることを指摘している。たとえば、徒弟制度的な色合いが強く残り、その中で技能を習得していかなければならない職場では、多少言葉が荒くなることもあり得るが、同じことを他の職場で行えば、暴言等の精神的な攻撃とみなされることもある。

こうしたことを踏まえて先ほどのエピソードを考えると、このエピソードがパワハラになるかどうかの判断は、時間外や強制などではなく、結局は飲み会が『業務の適正な範囲』に含まれるかどうかの判断にかかっていることが分かる。つまり、パワハラにならない派は「職場のコミュニケーションの問題を話し合う場として、飲み会もありなんじゃないか」と感じているのに対して、パワハラになる派は「飲み会は業務の適正な範囲ではないでしょう」と感じているという。

モヤハラはパワハラではない

しかし、実際にはこうした状況で「パワハラだ」と声が上がることもあり、多くの上司が悩んでいる。

そこで取り入れられているのが、パワハラ対策研修として裁判例や相談例を学ぶこと。しかし、判例学習は、明確なパワハラを理解するには有効だが、モヤハラへの悩みには対応できない。鈴木氏は「判例学習は、人事や法務などのしかるべき部署の人々にとっては必須です。しかし、現場の上司が悩んでいるのは、パワハラの定義に当てはまらない妥当な言動なのに『パワハラだ』と言われる状況、つまりモヤハラなのです。そのような上司にパワハラの定義やそれに当てはまる判例を教えても、彼らの悩みを解消することにはならないのです」

そして鈴木氏は、上司の悩みを解消するためにはモヤハラの存在を認識する必要があるとし、改めてモヤハラの特徴を明らかにした。

・モヤハラは、パワハラではない

パワハラは暴言や暴行、無視などの「行為の問題」であり、モヤハラは価値観のギャップという「状況の問題」である。

・モヤハラの行為自体は悪ではない

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