J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年12月号

TOPIC 野村総合研究所「次世代経営人材の育成における現状と今後」セミナー レポート 日本を牽引する次世代経営者の育成

去る9月28日、東京・コンファレンススクエア エムプラスにて野村総合研究所が主催する「次世代経営人材の育成における現状と今後」セミナーが開催された。次世代経営人材の育成に対する問題意識を反映するかのように会場は満席。100人以上が集まった。本記事では、当日行われた3つの講演の様子をレポートする。

取材・文/関 敦子、写真/本誌編集部

講演冒頭、米倉氏は、会場の出席者たちに、まず問いかけた。「タタ・ナノに乗ったことがある方は、いますか?」タタ・ナノとは、インド最大手の自動車メーカー、タタ・モーターズが市場投入した、小型自動車である。現在、この車の価格は2000米ドル。講演当日のレートで換算すると、約15万2000円という驚くべき低価格が実現されているのだ。「皆さんが、会社帰りに衝動買いすることも可能な価格」と、米倉氏はいう。もちろんこの車に対する見解は、さまざまにあるだろう。「玩具のようなものだ」、「売れていないではないか」、「性能、品質がまだまだ」といった指摘がある。「こうした反応は、まさに1960年代、トヨタのカローラを見た米国人、GMと同じです。そして、そのGMは、破綻しました」。米倉氏は、こう断ずる。目を向けるべきは、まず2000米ドルという低価格の実現――これは、どういうことなのか。何が起きていて、どのようにつくられているのだろうか。「もし日本がモノづくりの国、自動車の国だというならば、真っ先に乗りに行かなければならないのです。この会場に100人いて、誰もタタ・ナノに乗ったことがない。そのことこそが問題です。フットワークと好奇心が今、日本のビジネスパーソン、リーダー層に欠けているのです」さらに、この自動車がモーターを搭載し、熱量確保のための太陽光パネルを積み、それ自体が発電するようになれば、もはや自動車ではない。新しいビジネスの始まりである。そうした未来を展望するためには、日本の一人ひとりのビジネスパーソンが守りのスタンスから抜け出して、好奇心を持たなければならない。

変革はリーダーではなく個人の集団が起こす

改めて指摘するまでもなく、中国やインド、その他の新興国マーケットの動向を抜きにして、企業戦略を構築することは、もはやできない。ことに中国の過去7年の実質経済成長率は、平均で10%。そしてついに昨年、そのGDPは日本を超え、世界第二位の経済大国となった。しかし、人口13億人の中国に、人口1億人の日本がGDPで追い抜かれたことを嘆く必要はないと米倉氏はいう。むしろ憂慮すべきなのは、中国との比較においてではなく、日本における一人当たりの付加価値、生産性が上がっていないこと、それ自体である。80年代から90年代にかけて、「日本の製造業は強い」と目され、我々自身もそれを自負してきた。日本では、各社が非常に熾烈な競争をし、さらに大変に厳しい消費者の目にさらされてきた。それによって、日本の製造業は、その力を強固なものにしたのである。ところが、今世界に目を転じると、状況はどうなっているだろう。たとえば、携帯電話市場における日本製品の世界シェアは、わずか2.7%に過ぎない。これは、日本の携帯市場においてサムスンが占める割合と、ほぼ同じである。世界市場で日本の製品は、それほどまでにシェアをとれていない。現在、我々が直面している閉塞状況は、金融危機や大震災によってのみ、もたらされたものではない。実は、それよりももっと前からあったものなのであるという。であれば、そうした閉塞した時代における、経営人材とはどのようなものであるべきなのか。米倉氏は、短絡的なリーダー待望論を否定する。「政治の世界を見れば明らかでしょう。近年、日本社会は新しいリーダーを求めては、失望することを繰り返しています。しかし、誰かが現れて、この状況をすっかり解決してくれるなどということは、ありえません」そもそもリーダー待望論の背景には、従来と同じ方法でやれば、元の秩序を取り戻せるのではないか、という期待がある。ところが、先述したように、日本の閉塞は、これまでと同じ方法で打破されるものではない。今も、企業は過酷な競争下にあるし、厳しい消費者の目は変わっていない。価格競争力もデリバリーも、品質も最前線を走っていたはずの日本が、にもかかわらず、閉塞しているのだから、別の力が必要なことは明らかである。米倉氏はこうした変革期に力を持つのは、「創発的破壊」なのだという。「必要なのはカリスマ的リーダーではなく、創発プロフェッショナル。プロであり、創発性を理解している人材による相互作用こそが、成果を生むのです」新しい流れは、個人の小さな行為が集まってつくられる。苦境を逆手にとり、これを方向転換のポイントとしよう――米倉氏は、次世代のリーダーたる人びとに、こう提言した。

先進企業の経営者たちは、次世代の経営者育成にどのように取り組んでいるのか、実際に次世代経営者は育っているのか――こうした疑問をもとに、野村総合研究所では、2010年4月に「次世代経営者プロジェクト」をスタート。20人を越える現役経営者に対するインタビューや各種調査を行い、これからの時代に通用する経営者育成法を探った。そして7月に、『トップが語る次世代経営者育成法』(日本経済新聞出版社)としてまとめ、出版。この内容のエッセンスを石井宏司氏が紹介した。

講演では、以下の3つのテーマに従って問題提起が行われた。

(1)経営者育成は何のためにするのか

(2)経営者育成の担い手は誰なのか

(3)どのような育成方法が効果的なのか

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