J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年07月刊

Chapter 2−1 探究学習事例 京都市立堀川高校 学ぶ意欲に火をつける 「たのしんどい」 探究学習

実際の教育現場ではどのような探究学習が行われているのか。
まず紹介するのは、京都市立堀川高校である。
同校は1999年に「探究科」と呼ばれる専門学科を新設、3年後に同科1期生の国公立大学現役合格者は前年の約20倍となった。
“ 堀川の奇跡” を生み出した同校の「探究学習」について聞いた。

谷内秀一氏
京都市立 堀川高校 校長

Interview destination
堀川高校
1908年に設立された京都市立高等女学校が前身。99年の校舎建て替えと同時に探究科が設置された。立志・勉励・自主・友愛に基づいて、自立する18歳の育成を図ることを最高目標とし、豊かな学校の構築を目指す。文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、スーパーグローバルハイスクール(SGH)研究指定校。

[取材・文]=竹林篤実

自立する18歳を育む探究学習

「そのテーマでは、抽象的では?もっと具体化したほうがいいよ」

「国際比較のデータがあるんじゃないかな」

「残業時間にはどれくらい男女差があるの?」

1人の生徒が発表を終えると、机を円形に並べて耳を傾けていた生徒たちが次々と意見を飛ばす。

これは堀川高校の「探究基礎」授業の一幕である。同校では、入学してから1年半、この科目に取り組む。1年前期をHOP(探究の型を学ぶ)、1年後期をSTEP(探究の術を身につける)、2年前期をJUMP(探究の道を知る)と位置づけ、HOP では探究活動の進め方や論文の書き方、STEPでは専門分野固有の研究手法を学び、JUMPでは論文作成を行う。冒頭は、2年生になったばかりのゼミのメンバーが、これから1人ずつ取り組む論文のテーマについて検討している場面だ。

探究基礎の授業自体は週1回各2時間だが、生徒たちは授業以外の時間とかなりの労力をこの科目に費やす。そんな探究の授業を続ける根本には、「自立する18歳を育むこと」という同校の最高目標がある。

「社会に出れば、答えが用意されていない問題に対処しなければなりません。その際に求められる自分なりの答えを根拠と共に設定する力を身につけることが、探究の授業の目的です。社会で困難にぶつかっても乗り越えるには、答えがない問いや複数答えがある問いを独力で設定し、自分なりに答えを作って伝えるというプロセスを学び、習得することが大切だと考えています」(谷内秀一校長、以下同)

型を学び、術を身につけ、道を知る

探究基礎の具体的な内容を紹介していこう。HOPでは、探究の進め方や論文の書き方を学び、論文作成の実習を行うと同時に、考え方のベースとなるクリティカルシンキングを身につける。得られる情報を鵜呑みにするのではなく、情報の信頼性を見極め、主張と根拠の論理的なつながりをチェックし、言及されていない選択肢まで思いをめぐらせることができるようになるのが目的だ。

そこで重視されるのが「質問」である。同校では、“相手のために”質問する心構えが求められ、相手が答えにくい質問ほど良い質問と評価される。なぜなら、答えにくい質問とは、質問された側にそれまでなかった視点を提供する問いかけであり、新たな気づきをもたらすからだ。大切なのは質問から対話を育み、新たな価値を創造する姿勢である。相手をやり込めるディベートではなく、ダイアローグを重ねて相手と共に、より高みを目指すのが同校の学びである。

STEP に進むと、全員が言語・文学、人文社会、国際文化、物理、化学、生物学、地学、数学、情報科学などのいずれかのゼミに分かれて、輪読会や実験手法、調査手法など各分野での研究に必要な手法を学ぶ。最終目標は、2年で取り組む研究のテーマ設定だ。

そしてJUMPで、各自が探究活動に取り組む。

「多くの生徒たちは、テーマ設定で頭を悩ませます。オリジナルのテーマが求められるため、先行研究を読み込み、ゼミのメンバーから質問を受け、対話を重ねながらテーマを決めるのですが、これが難しい。半年で成果を出すことも計算に入れなければなりませんから」

テーマが定まると、各自が個別に研究を進める。途中段階でポスター発表を行い、同級生やTA(大学院生のティーチングアシスタント)、教員からアドバイスや指摘を受ける。中間発表は公開されるため、1年生はもとより、他校の教員や大学教授も見学に来る。

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