J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年04月号

Opinion① 情報マネジメント力を向上させるソーシャル・モバイルな学び

ソーシャルメディア、スマートメディアの隆盛は、企業の人づくりにどのような影響があるのか、そして企業はそれらをどう人づくりに役立てていくべきなのか。特定非営利活動法人日本イーラーニングコンソシアムで会長を務め、企業内教育においても30年以上の経験を持つ小松秀圀氏に聞いた。

小松 秀圀(こまつ・ひでくに)氏
日本イーラーニングコンソシアム会長、熊本大学大学院 非常勤講師など、教育のシステム化ビジネスに永年携わるとともに、eラーニングや企業内教育関連の諸社会活動に参画。20数年アメリカの教育事情を調査するなど、企業内教育を改善する社会的活動を行っている。富士ゼロックスで企業内教育のプロフェッショナルとして20年の実践経験を持ち、NTTラーニングシステムズではメディア事業の開発で会社の基礎を構築。

[取材・文・写真] = 髙橋美香

スマートフォンの急増で加速するSNSの活用

近年のスマートフォン普及台数増加は、目を見張るものがある。特に今年2012年は、スマートフォン契約者数の急増が見込まれる年といわれている。今やアナログ回線を使ったDSL、CATVなどの“固定系”よりも、モバイル系ブロードバンドアクセスのほうが契約数も多い。これは、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル端末を活用する環境が整いつつあることを意味する。

これらモバイル端末には、ソーシャルメディアとの相性が抜群に良いという特徴がある。そのため、これらの端末の爆発的普及は、ソーシャルメディアが私たちの生活やビジネスに一層浸透していくことを表す。

そして、このモバイル端末やソーシャルメディアの隆盛は、企業内教育にも大きな影響をもたらす。その事象に考えられるのが、いつでもどこでも、という利便性を活かして、今までパソコンを使わないので導入が難しかった職種にもeラーニングによる教育が可能になること。また、業務に直結した情報共有が円滑に行われるようになるといったことである。

某航空会社では、すでにモバイル端末の利便性に着目し、全客室乗務員にiPadを配布。マニュアルを入れて活用しているという。

業務に関する情報や知恵を、SNSを使ってリアルタイムで共有することができるということは、仕事の仕方なども共有されるということであり、これはすでに教育といえる。

Web(クラウド)上で自由にデータのやり取りができるのもソーシャルメディアの良さだ。しかもそのセキュリティは、専門家集団によって構築されているため、企業の独自の対策の域をはるかに超える。

ソーシャルラーニングとは何か――TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを(時にモバイル端末から)活用し、情報を集めたり、世界へ発信したりする。そして社員個々人が情報ソースをコントロールしながら、情報を使いこなして学びにつなげる。そうした行為こそがまさしく「ソーシャルラーニング」「モバイルラーニング」である。企業は、こうした潮流に早く気がつき、活用の環境を整えるための対策を講じる決断を迫られているといえる。

これからの学びと“非構造化情報”

ソーシャルラーニングを企業内の教育に採用することで、学びはどのように変わるのか。私は、これまで以上に業務に直結する学びに変容していくのではないかと考えている。

図表1を見てほしい。これは、学びの構造とソーシャルラーニングについて説明した図である。

これまでは、業務に役立つ情報のソースが組織内の経験知・暗黙知にとどまっていたのが、ソーシャルメディアの普及によって、社会全体から、素早く情報収集できるようになった。知恵や考え方を含む「情報」を、これまでにない驚異的なスピードで入手することができるようになってきたのである。

しかし、ここには1つ注意点がある。ソーシャルメディア上で個人が発信している情報は、常に更新され、スピード感がある一方で、断片的な情報でもあるということだ。

このような断片的で暗黙知や形式知化された各種情報は「非構造化情報」(=コンテクスト)と呼ばれている。非構造化情報は、全情報の80%を占めているといわれ、しかもこの非構造化情報は絶えず変化する特徴を持っている。

一方、きちんと体系立てられた「構造化情報」(=コンテンツ)は、全情報のわずか20%ほど。情報がわかりやすく整理されているものの、情報のアップデートのスピードについては、非構造化情報にどうしても劣ってしまうのが特徴。従来の集合研修やeラーニングなどは、この構造化情報を頭に叩き込んで覚えていくという学習スタイルである。FALSE

Web上の情報の80%を非構造化情報が占めるに至った今、ビジネスパーソンの成長を支えていく情報として、この非構造化情報こそが重要な存在である。そして、今後の組織、個人には、非構造化情報を組み合わせたり再構成したりして、新しい価値を生み出したり、顧客の問題解決のために使いこなす能力=情報マネジメント力を身につけることが求められるようになる。

ちなみに私は、日本企業は、情報に対する感度が他国の企業に比べて低いように感じている。その背景には、これまで日本経済がものづくりに支えられてきたため、情報を巧みに操ることよりも、知識をつけていくことを重視してきたという特徴があるようだ。

しかし、今や日本経済を支える産業は、ものづくりに限らず多様化している。社会が知識基盤社会に変化し、構造化情報から学ぶよりも、非構造化情報から学び、仕事に役立てていく場面は、これまで以上に増えてきているのである。

ものづくりの工業化社会では世界最高水準の能力を持ちながら、それを活用し切れていない今の日本。ここで変革しなければ、加速し続ける知識基盤社会でのビジネスで、欧米諸国から大きく後れを取ってしまう。

企業教育の従事者は、こうした情報の構造変化にいち早く気づき、社会に適したラーニングデザインを社内教育に取り入れることを本気で検討すべき時期に来ている。

学びの構造変革――Learning2.0の時代へ

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