J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

Learning Design 2018年07月刊

Chapter 1 探究学習とは “想定外”と“板挟み”を乗り越え生きる力を養う 「探究学習」 とは

今、教育現場で導入が進められている探究学習とは、どのようなものなのか。
そして、なぜ今、必要とされるのか。学校教育の第一人者に話を聞いた。

Interviewee
鈴木 寛(すずき かん)氏 
文部科学大臣 補佐官

文部科学大臣補佐官、東京大学大学院公共政策学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授。
1964年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、通産官僚、慶應義塾大学助教授を経て、2001年から13年まで参議院議員。在任中に文部科学副大臣を2期務め、2015年より4期文部科学大臣補佐官。

[取材・文]=崎原 誠

探究学習とは

――2020年の教育改革で導入される「探究学習」とは、どのようなものでしょうか。

鈴木寛氏(以下、敬称略)

今回の教育改革では、小中高の学習指導要領の改訂、大学入学試験の改革等が行われます。特に大学入学試験の改革は、1979年の共通一次試験導入以来となる約40年ぶりの大改革です。また、高校では、「理数探究」「総合的な探究」「歴史総合」「地理総合」「公共」などの科目が新設されます。

「探究」とは、まさに読んで字のごとく、自然界や実社会に存在する課題を基に、知識やスキルを統合的に活用しながら、問題の構造を深く理解し、その課題の解決のために、思考や判断を繰り返していくことです。そのプロセスの中で主体的に、そして多様な他者と協力しながら、積極的に学ぶ姿勢・態度や人間性を身につけていきます。ある種のプロジェクト的な学びといえます。

工場モデルからの脱却

――なぜ今、探究学習が求められているのですか。

鈴木

背景には、「シンギュラリティ(技術的特異点)」があります。2040年代半ばには、AI(人工知能)が人間の知能を超えていくと言われており、それを待つまでもなく、デジタルテクノロジーの急速な進歩により、人間の仕事がどんどんAIに取って代わられていきます。ですから、自ら新しい仕事を作り出していかなければなりません。

OECD(経済協力開発機構)でも、「教育2030」というプロジェクトが進められており、そこでは、「ナレッジ、スキルは当然必要だが、より重要なのはアティテュード(態度)とバリュー(価値観)」だと言われています。特に重要なのが、以下の3点です。

これらの力を身につける手法が、探究学習やプロジェクトベーストラーニング、アクティブラーニングです。これからの学びは、メモライゼーション(暗記)からセルフマネージ(主体的な学習)、そして、エラボレーション・ストラテジー(探究的な学び)へと変わっていく必要があります。

――知識を覚えるだけでは、今後の変化に対応できないということですか。

鈴木

そうです。20世紀は工業社会ですから、大量生産・大量流通・大量消費をどう実現するかが社会課題でした。したがって、日本の戦後教育は、優秀な工場労働者と工場労働管理者の養成を目的としていました。工場労働者には、「マニュアルを覚えて、正確・高速に再現する力」、そして工場労働管理者には、「労働者にマニュアルを覚えさせ、それをチェックし、改善する力」、つまり、ある意味での“PDCA 力”が求められたのです。

日本は、多くの人をその型にはめることに成功しました。しかし結局、日本人が最も得意としてきたこのコンピテンシーは、デジタルテクノロジーに取って代わられます。

とりわけ、2020年の教育改革が対象にしている子どもたちは、22世紀まで生き、22世紀をつくる世代です。ポスト・シンギュラリティを生きる彼らに、20世紀の大量生産型の教育をしていてよいわけがありません。

課題発見・課題設定へシフト

――探究学習への取り組み方について、もう少し詳しく教えてください。

鈴木

探究学習は、①課題発見、②課題設定、③課題解決と、大きく3つのプロセスに分けることができます(図)。課題発見とは、文字通り世の中の新たな課題を見つけてくることで、一番難易度が高い。課題設定は、様々な課題に優先順位をつけることで、これも重要です。

これまでの教育は、課題解決ばかりやってきました。当然、本人の成長度に合わせた難易度調整は必要ですが、今後は今まで手をつけてこなかった課題発見や課題設定にも取り組んでいくことになります。

そのためには、知のインプットの仕方から変えていくことになるでしょう。今までは、加工された情報を丸暗記すればよかったかもしれませんが、これからは加工される前の膨大な情報をインプットし、それを咀嚼し、統合したり再構成したりと、“編集”をしていく力が求められます。

――様々な知識を吸収しないと、課題発見も課題設定もできないのですね。

鈴木

知識というより情報です。知識も必要ですが、知識以前のもののインプットから、知をつくっていく力を養うことが大切です。様々な情報を集め、観察と実験を繰り返し、そこから自分が大事だと思うものを切り取り、統合し、新しい知を発見する。その過程は試行錯誤、まさに探究です。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:1,909文字

/

全文:3,818文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!