J.H.倶楽部

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Learning Design 2018年07月刊

ISSUE3 現在進行形の企業の取り組み カルビー 真のグローバル企業を目指して 事業を担う経営視点の醸成は 段階的、かつ “外”を意識した育成が鍵

柔軟な人材登用や画期的な人事施策で話題となる、大手食品会社のカルビー。
注目を集めるのは、戦略と事業成長がリンクしているからである。
成長の要となる事業リーダーは、どのようにして育まれているのか。

小池美帆氏
人事総務本部 人財・組織開発課 課長

カルビー株式会社
1949年設立。「ポテトチップス」や「かっぱえびせん」などのスナック菓子で知られる、日本を代表する食品会社。近年は「フルグラ」のヒットで話題を呼んだ。社名はカルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を合わせた造語。
資本金:120億3,300万円、連結売上高:2,515億7,500万円(2018年3月期)、連結従業員数:3,798人(2018年3月31日現在)

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=カルビー提供、編集部

●背景 グローバル基準の育成が急務

日本国内のスナック菓子市場の規模は、およそ4,200億円(全日本菓子協会調べ、2017年)。その半数以上のシェアを占めるのがカルビーである。特にここ10年の同社の成長は目覚ましく、その原動力である働き方改革はたびたび話題となった。

したがって事業リーダーの育成にも画期的な秘策があるのかと思いきや、人事総務本部人財・組織開発課課長の小池美帆氏の答えは「新任管理職向けの階層別研修はありましたが、事業リーダーについては特別な施策はこれまで設けていませんでした」という意外なものだった。しかし、同社はこの現状を成長機会や課題と捉えている。

「国内市場だけに留まるのであれば、これまで通りでよいのかもしれません。しかし私たちは、グローバルを視野に入れています。今のままではグローバル企業の事業責任者と対峙しても、力負けしてしまうでしょう。グローバル基準で仕事を動かせるリーダーの育成が求められているのです」(小池氏、以下同)

では、同社が考えるこれからの事業リーダー像とは。

「どの役職においても共通しているのが、サーバントリーダーシップともいえるような力を発揮できる人です。自身が先頭に立ってぐいぐい引っ張っていくというよりも、メンバーを尊重してサポートに回りつつ、チームの調和を図れるような資質ですね。

加えて本部長や部長クラスであれば、『財務』『組織』『戦略』の3つの視点を持ち合わせていることです()」

ビジネスを行うにあたり、お金の流れを押さえておくのは大前提だが、それに加えて、全社的な視野で自分のチームの役割を客観的に捉える力や、社会環境や市場の変化を敏感にキャッチし、中長期的に事業の戦略や運営を考えられる力も重要である。まさに次代の経営者たる素養を求めているのである。

「当社は、事業責任者に原則全ての権限を委ねています。言ってみれば、1つの会社を丸ごと任せているようなものです。ですから、経営者と同じセンスを必要とします」

全体を統括する事業本部長・部長クラスに対し、実務を回していく課長に期待することは。

「『戦略』については部長クラスと同様なのですが、そこに『ビジョンの具現化』『メンバー育成』『業務遂行力』が加わると考えています」

チームが全社ビジョンをいかに具現化していくかを考え、実行しつつ、メンバーの成長をサポートし、自分の業務とマネジメントを両立させる。そうした力が課長レベルには求められているという。

●施策1 若手参加可のテーマ別手あげ式研修

上記の考え方を踏まえ、同社では2018年の夏より、新たなリーダー育成制度を開始する。

ポスト本部長・部長に対しては、選抜式で育成を図る。対象となるのは、45歳ほどまでの中堅人材。毎年検討を行っているサクセッションプランに基づいて成長をフォローする。

「対象者は次世代の経営人材といっても過言ではありません。これまで経営者育成のためには、数名を大学のMBA プログラムに派遣するといったことのみ行ってきました。しかし新制度では、従来よりも会社からの期待をしっかりと伝えるなどし、次のカルビーを担う自覚を高めていきたい。また同時に、社内に健全な競争が起こる環境も醸成していく考えです」

課長職の育成については、課長職に就く前の層、または課長職に就いて数年経過した層について、課題を感じている。そこで、先に紹介した「戦略」「ビジョンの具現化」「メンバー育成」「業務遂行力」をテーマにした4種の手あげ式研修を設ける。どれも終日でカリキュラムが組まれており、自身で日ごろの仕事を振り返り、補うべき素養に関するテーマを1つ選んで受講する。

このプログラムが面白いのは、入社2年目以上の若手社員から受講できることだ。若手とベテラン社員が同じグループで学ぶこともあり得る。共通のテーマを、多様性に富んだメンバーで学ぶことができるという。

「当社の新卒採用は、ここ数年、ゆくゆくはリーダーや経営幹部になりたいという志向性を持つ人材を獲得する傾向にあります。そのため早い段階でマネジメント職を意識する人も増えており、若手のうちから学べる機会を設けることにしました。若手にとっては、既存のリーダーから学ぶべきことがあり、既存のリーダーは、若手の柔軟な発想に感化されることでしょう。そのように双方で刺激を受けるような場にしていきたいと考えています」

●施策2 数値・成果による透明な評価が事業感覚を磨く

だが、ここで1つの疑問が湧く。先に紹介した事業リーダーの育成施策は今、整備中のものだ。では、これまでのカルビーの成長を支えてきたものは何だったのか。つまり、現役の事業リーダーたちは、どのようにして結果を残す組織をつくり上げてきたのだろう。

その疑問に、小池氏も明確に答えることは難しいという。だが「透明性の高い目標管理制度が好影響を及ぼしているのでは」と推測する。

「C&A(コミットメント&アカウンタビリティー)という名の制度です。管理職になると、目標は社内に公表されます。また当社の評価指標は、基本的に数字で表せるものに限られています。人事なら女性管理職比率を〇%にする、広報なら取材対応件数△件と、かなり具体的です」

事業部門であれば、当然ながら売上高だけでなく利益や販管費の管理も項目に上る。リーダーは教えられずとも財務指標を率先して読み解くようになり、目標達成やマネジメントに還元する意識も自ずと高まる。

そして管理職は目標達成に向け、チームのメンバーを選ぶ権利がある。

「しかしながら、自分に都合のよい人材だけを集めても、目標はクリアできません。それに前年実績を上回るとなると、個のパフォーマンスの最大化を図ることが不可欠になってきます。フルグラ事業本部の網干も言うように(右の囲み参照)、メンバー育成や目標の共有など、チームビルディングに自然と関心が向くのかもしれません」

評価もシンプルだ。成果は賞与に確実に反映される。ベースとなる給料は役職によって決まっており、これも開示されている。しかし、成果次第で賞与が大きく変わるのだ。

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