今週の“読まぬは損”

第186回『今こそ使える昭和の仕事術-ビジネスマン30年生の経験がたった3分で身につく』

菊池健司氏 日本能率協会総合研究所 MDB事業本部 エグゼクティブフェロー

菊池健司氏

読書の鬼・菊池健司氏イチオシ 今週の"読まぬは損"
1日1冊の読書を30年以上続けているというマーケティング・データ・バンク(MDB)の菊池健司氏。 「これからの人事・人材開発担当者はビジネスのトレンドを把握しておくべき」と考える菊池氏が、読者の皆様にお勧めしたい書籍を紹介します。

アナログコミュニケーション再考の時代

「昭和」vs「令和」をテーマにしたTV番組が時折放映されているが、実は意識的に見るようにしている。昭和の世界観を見た令和の若い世代が「えー」「信じられない」といったリアクションを取る。確かに、何だかハチャメチャだなと思いつつも、きっと昭和当時のよい部分もあったのだろうなと過去に思いを馳せる。

平成2年に社会人キャリアをスタートした私は、当時は元号が変わったばかりとはいえ、ありがたいことに「昭和の仕事術」を上司や先輩から学び、体感することができた世代である。

今にして思えば、素晴らしい学びも、時には理不尽だと感じることも諸々あったが、それでも、昭和のアナログコミュニケーションを経験できたことは、今、令和の時代を生きていく中でもよかったと思っている。

特に、インターネットがない時代、すなわち検索手段もメールもなく、当然のことながら「アナログ」を前提としていた時代を、社会人キャリアの前半で約6年程度経験できたことはありがたかった。

直接コミュニケーションを取った方がいいこと、電話で話した方がいいこと、メールやSlack等で急いで伝えたほうがいいこと……コミュニケーション手段においても、状況に応じた選択肢を持てていることは、やはり過去の経験値が大きいと感じている。

実は今でも、以下記事には時折目を通している。お読みいただける環境の方はよければ是非……。

参考:日経ビジネス電子版「特集・昭和な会社が強い」2014年2月17日号

丁度、10年経過した今読んでみても、「なるほど」という学びを感じているのは私だけであろうか。そして、いつも通り、書連巡りをしていて「なるほど!」を思わず相槌を打った素敵な1冊を今回は紹介したい。

その名も「今こそ使える昭和の仕事術」。タイトルからしてまさにドンピシャである。著者である後田良輔氏は、大手広告会社に30年間営業職として勤務し、誰でも使える「タイムパフォーマンス抜群の気くばり(タイパ気くばり)」を駆使する気くばりのプロフェッショナルとして著名な方である。2011年に刊行された『ぶっちぎり理論38 落ちこぼれでも3秒で社内エースに変わる!』でご存じの方もいらっしゃるかもしれない。

「誰も教えなくなった昭和の仕事術」執筆に至った背景を「はじめに」のページで披露してくださっているが、共感される方が多いのではないだろうか。広告営業30年、各界のVIP観察実に3,000名、後田氏の見事な眼力が様々な角度から「昭和の仕事術」に反映されている。

本書の構成

本書は、全10章で構成されている。

各章の中において、大切な教えを数多く得ることができる。
以下に、特に印象に残ったポイントのごく一部となるがご紹介していきたい。
実践したい仕事術満載であり、1つ1つのエピソードは完結なので読みやすい。

Chapter1:基本の仕事術

何事も基本が重要だということ、そして会社の存在や目的を改めて考える良いきっかけとなる章である。「信用は自分を削って作るもの」という言葉が自分を戒めてくれる。

Chapter2:不快にさせない仕事術

「マネは親近感を引き寄せる」「電話は赤ちゃんと思って優しく接する」なるほど相手を不快にさせない仕事術は奥が深い。

Chapter3:メール・SNS・リモート会議の仕事術

「メールやSNSのラリーを自分で終える」「迷ったら箇条書き」このやり方は今後も踏襲していきたい。また、メールの返信の早さ(昭和では折り返し電話の早さか)に関するくだりも是非参考にしていただきたい。

Chapter4:会話の仕事術

「聞き上手はうなずきを見える化する」これは名言だと思う。うなずきの大波小波法則、私もお薦めしたい。そして本章で確かにと大きくうなずいたのは、「も」という最強の一文字を使う話し方……なるほど……。「大人の質問」に関する考え方も是非学んでおきたい。

Chapter5:ビジネスシーンの仕事術

「スピードの早さが価値」という項があるのだが、改めて身につまされる。我が家の近くに大手自動車ディーラーの店舗があるのだが、そこの担当者の方はいつもお客様の姿が見えなくなるまで頭を下げ続けている。「一流は余韻で人を判断する」という教育が行き届いているのであろう。

Chapter6:ワンランク上のビジネスシーンの仕事術

「逆締切り」を提案する、「人を動かす3の法則」「即買いの費用対効果」……この章も即実践したい内容が満載である。
今、鞄に入っている私のノートはミニサイズである。これは反省しなくてはならない……(詳しくは本書にて)。

Chapter7:社内の仕事術

一例だが、若い頃から掃除の重要性や電話を即座に取ることの重要性はよく上司に教わってきた。本章の様々な仕事術も是非、基本スキルとして学んでおきたい。

「特定の人と仲良くなりたいなら1日3回話しかける」近年、静かな職場が多いと聞いているが、やはり直接話すことは重要である。コロナ渦の3年間で私たちはその重要性をより学んだと思う。

Chapter8:営業の仕事術

まさに著者のプロ領域である。私も今後、「新しい提案は2ヶ月前に行う」ようにしていきたい。

Chapter9:会食の仕事術

ビジネス会食の機会もコロナ渦を経て、増えているという方も多いと思う。
ここで出てくる「満足感」は大きなポイントだと思う。

Chapter10:会食の仕事術

最終章では、大切だが、なかなか継続してできないとビジネスパーソンが悩むテーマが目白押しである。是非、著者のアドバイスを参考にしていただきたい。

新人、若い方のみならず、新任マネジャーも必読の「アナログコミュニケーション」術

本書は、以下のような項目を意識しながら読み進めた。

  1. 日本企業/ビジネスパーソンの強みを再考するという観点から熟読する
  2. 自身の半生も振り返りながら、「自分の昭和の仕事術」に新たなページを加える
  3. 後田氏のアドバイスを読み、今、ビジネスシーンにおいて何が欠けているのかを考える
  4. ビジネスリーダーに必要な要件が多く含まれており、顧客へのアドバイスにも活かす

本書は是非、最近社会人になられた方や若いビジネスパーソンには是非ともお読みいただきいバリュー満載の1冊である。そして、新任マネジャー、次世代リーダーの皆様も、部下育成の観点そしてご自身のスキルチェックのために是非本書を活用いただきたいと思う。

私のような世代にとってはどこか懐かしく、そして大切な学びを得られる。若い方から見れば、きっとある意味新鮮なのではないだろうか。多くの皆様にお勧めしておきたい。

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