ATDの風 HR Global Wind from ATD <第4回> ATD-ICEに見る組織開発の方向性
米国で発足した人材・組織開発の専門組織ATD(タレント開発協会)の
日本支部ATD-IMNJが、テーマ別にグローバルトレンドを紹介します。
米国で開催されるATD国際会議&エクスポ(ATD-ICE)の内容は、基本的な知識・スキルから企業事例、最新の理論まで多方面にわたる。全体を俯瞰してみると、人材開発や組織開発などのトレンドをうかがうことができる。本稿では、ここ数年の会議を振り返って、組織開発という視点からどのような変化が起きているのかを整理してみたい。
■改革が求められる背景
ここ数年、ATD-ICEで共通認識として語られる改革の背景の1つめは、「VUCAワールド」だろう。2014 年あたりからさまざまなセッションで、この言葉が使われるようになった。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉である。このVUCAに対応する能力と、個人や組織の現在の能力とのギャップこそ、今日の企業が直面する課題といえよう。この会議でも「厳しい変化に適応すること、あるいは変化を生み出していくことが重要だ」といった文脈で、さまざまなテーマが取り上げられている。
2つめの背景は、ミレニアル世代の台頭だ。2000 年代に入ってから社会人となったこの世代が、今日では就業者の主流になってきている。ミレニアル世代は、デジタルデバイスを常用し、SNSを活用した情報のやり取りに長け、仕事では頻繁なフィードバックを求めるといわれている。彼らを理解し、いかに次世代リーダーとして育成していくかは今日の大きなテーマだ。特に、彼らの特性に合ったマネジメントの仕方、学習法に変えていく必要が認識されてきている。
3つめの背景は、グローバル化である。昨今では、「部下の半数が外国人である」「部下の多くが海外にいる」といったケースが普通になってきた。そこで、従来の組織マネジメントやコミュニケーション方法を変える必要が高まっている。
4つめは、テクノロジーの進化である。SNSやモバイルは学習の在り方を変えるだけでなく、組織のコミュニケーションをも変えている。
そして5つめは、脳科学の進化である。認知科学や神経科学の近年の知見が、学習方法、モチベーション、そして評価段階づけに代表されるパフォーマンス・マネジメントの在り方に変革をもたらしている。