おわりに 仕事の面白さとテーラーメイド
女性リーダー育成の目的は
「女性活躍」を越え、「女性リーダーのパイプライン」を構築していくためには、何が鍵となるのか。Part1は現役女性役員たちの経験、Part2は識者の知見、Part3は実践の場のリアルで、それらを明らかにするのが、本特集の狙いである。
現在、「働き方改革」に注目が集まっており、女性活躍推進の文脈でも、「育児と仕事の両立支援」が意識されやすい。しかし、OPINION2の大沢真知子氏が語る通り、女性の活躍を推進する目的が、単に労働力不足への対応ではなく、質の高い人材を多く保持し、経営の質を上げるためであれば、「ワークライフバランスへの対応に加えて、女性の育成を早期の段階から考える」必要がある。そこで、まず女性の「選抜・早期育成」「パイプラインの構築」の観点で、特集を振り返ろう。
リーダーがリーダーを育てる
今回取材をした3社は、いずれもポテンシャルを持つ社員を特定し、選抜育成を行っていた。そのうち日本IBMとアクサ生命保険では「スポンサーシップ・プログラム」で、役員などのリーダーがリーダー候補を、個人の能力開発に沿ったプランをつくり、育成していた。日本IBMの梅田恵氏はこう語る(58 ページ)。
「女性の場合は、ずっと候補者プールの中にとどまっていることが多かったのですが、スポンサーシップ制度によって登用を加速させました。2年で上がれない時は候補者を入れ替え、次の人にチャンスを与える仕組みです。ただし、その人に『×』をつけることはありません。環境を変えれば伸びる可能性もありますし、成長に時間のかかる人もいるからです」―異動による能力開発などと組み合わせ、長い目で経営人材を輩出する仕組みだ。
アクサ生命保険でも、同様の仕組みと共に、男女を問わず、主要ポジションのサクセッションプランを立てていた。現場から①すぐに代わりになれる人、②2~3年後であれば可能な人、③3~5年後であればできそうな人の具体的な名前を挙げてもらうが、候補者が男性に偏らないよう人事が働きかけている。