Part3 実例から学ぶ!③CASE 3 日本IBMダイバーシティ先進企業の女性の育て方候補者を増やす、機会を与える、意識を高める
日本IBMの女性活躍推進の歴史は長い。
1960 年代から四大卒女性を積極的に採用し、各種制度を整備して活躍を促してきた。
近年も、上級役員を部長クラスの“スポンサー”につける制度や、関係構築・影響力を学ぶ研修、
挑戦意欲を高める研修など、さまざまな施策を展開する。
ダイバーシティを重要な企業戦略と位置づける同社の
女性リーダーのパイプライン構築について取材した。
●活動の背景 20年前に取り組みを本格化
「なぜ今さら?」―。1998 年、社長直属のプロジェクトチーム、「JapanWomen’s Council (JWC)」の立ち上げにあたり、メンバーに選ばれた女性たちからは、戸惑いの声が上がった。
同社は、1960 年代から大卒の女性を積極的に採用。男女同一賃金・専門職採用により、女性の活躍を促してきた。定年年齢も男女同一とし、育児支援策も整備。子どもを産んでも十分、働き続けられる環境だった。当然、業務においても女性だからと甘やかされることはない。それだけに、「自分たちは十分に活躍している」という自負を彼女たちは持っていた。
しかし、会社がプロジェクトチームを設けたのには、理由があった。その前年、全世界のIBMで女性の活躍度を調査したところ、日本が最下位となったのだ。社員に占める女性の割合は13%。管理職は1.8%に過ぎず、役員に至っては、1971年に新卒で入社した内永ゆか子氏(現NPO法人J-Win理事長)1人だった。
人事ダイバーシティー企画部長の梅田恵氏は、こう語る(以下、同)。
「当時の日本の状況からすると女性役員がいること自体が画期的でしたが、日本では上位でも、世界では最下位。JWCのメンバーも、女性管理職が1.8%しかいないことにはショックを受けました。みんな何となく、『社員の3割くらいは女性で、その3割くらいは管理職になっているだろう』と考えていたからです」。環境が整っているにも関わらず、女性が管理職になれないのはなぜか。JWCは、この問題に本腰を入れて取り組むことにした。
●主な取り組み 候補をプールし、挑戦させる
■母数を増やす
1つめの課題は、そもそも女性社員が少ないことである。候補者が少なければ、女性管理職を増やすことはできない。同社は、古くから女性の採用に積極的だったが、技術系の会社ということもあり、例年、女性の採用比率は15%前後にとどまっていた。そこでまずは女性の採用数を増やすことにした。
「2000 年以降、女性の採用比率を3割以上としました。近年はさらに増やしており、この5年ほどは4割以上が女性です。文系の学生も、積極的に採用するようにしました。文系でも教育すればエンジニアになれますし、特に営業やコンサルタントなどの職種で、女性の活躍が期待できます」