Part3 実例から学ぶ!② CASE 2 アストラゼネカ マインドセットを変える取り組み 女性たちが強みを自覚し 自信を持つ「WLIプロジェクト」
アストラゼネカは、英国に本社を構え世界100カ国以上に拠点を持つグローバル企業である。
「働きがいのある職場」づくりをめざし、特にダイバーシティを重要な経営戦略のひとつと位置づけ、
推進に取り組んできた。管理職に占める女性割合が高く、
同社の日本法人であるアストラゼネカ(株)も日本企業の中では
女性が活躍する会社として位置づけられる。同社の社員の取り組みに、
女性社員が自信を持ち、リーダーシップを発揮できるように支援する
「ウィメンズ・リーダーシップ・イニシアチブ(WLI)プロジェクト」がある。
●背景 女性たちの“自信”を引き出す
アストラゼネカ日本法人は、2010 年にダイバーシティ推進室を立ち上げ、「女性の意識改革」「柔軟な働き方を推進する制度」「経営陣のコミットメント」を3本柱として、さまざまな施策を行ってきた。その結果、2010年に12.9%だった女性管理職比率が、2016年には20.8%にまで高まっている。これは日本企業の中ではかなり高いが、部長職に占める女性の割合が40%を超えるグループの欧米拠点と比べるとまだ半分にすぎない。そこで同社は「女性リーダーを育成し、管理職に占める女性割合を2020年までに30%以上にする」ことを目標とする行動計画を実施している。
「具体的な取組内容は、部門ごとの詳細な目標設定、働きやすい環境の設定、タレント候補と管理職候補の育成、そして女性のリーダーシップ開発のためのネットワーキング支援です。
2015年時点での女性管理職比率は18.5%と、2010 年の12. 9%から5%程度の伸びにとどまっていました。そこでテコ入れを図ったのです(」人事総務本部・奥田あゆ美氏)
同社だけではなく、一般的に、女性は管理職やリーダーになるのを躊躇する傾向にあるが、それはなぜか。横浜営業部で営業部長を務め、現在WLIプロジェクト(後述)を統括する村尾暁子氏は、「そもそもマネジャーという選択肢が、自分のキャリアパスの中に存在しない女性が結構いるのです。少し考えたとしても、例えば、多くの職員を束ねていくなんて到底できそうにない、と思うのではないでしょうか」と語る。
そんな女性心理の奥に潜むのは、“自信のなさ”だ。同社では、2015年に実施した社員サーベイの結果から、女性社員が自信を持てていない現状を把握していた。
●挑戦(2014年~ 15年) WLIプロジェクトの始まり
自信を持てないために、本来の力を存分に発揮できていない女性が多数いる―この、いかにももどかしい状況をなんとか改善したいと、特に強く望む女性リーダーがいた。アメリカ出身のドーン・ディキャンディーロ氏だ。2014年にメディカル本部でシニアディレクターを務めていたドーン氏は、以前アメリカで勤務していた時に、女性の意識改革を図る取り組みを主導したことがあった。その経験を活かし、彼女は日本でも同様の取り組み「ウィメンズ・リーダーシップ・イニシアチブ(WLI)プロジェクト」を立ち上げた。
WLIプロジェクトは、女性特有の仕事でぶつかる課題について話し合い、解決策を見いだすのに加え、性別を問わずメンバーのリーダーシップを開発していく社員主導のコミュニティーである。月に1回、連動性のあるテーマについて議論して課題と改善策を考え、それを各自、所属部署に持ち帰って実践や共有を行う。
当初はメディカル部門限定の取り組みであり、参加人数も20 名程度と小規模なものだった。
「もちろん人事では、こうした動きを把握し、応援していました。やがてプロジェクトが進むにつれて、傍目で見ても明らかに成果の出ている様子が伝わってきたのです。やがて経営陣もプロジェクトの有効性を認識するようになり、2015 年度からは全社的な取り組みとして展開されるようになりました」(奥田氏)