第42回 “寄り添うトレーナー”の採用と育成の秘密 結果にコミットするトレーナーの育て方 幕田 純氏 ライザップ 統括トレーナー 教育ユニット長 他|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
「結果にコミットする。」のCMで知られるライザップ。プライベートジムのサービスを支えるのは、トレーニングから食事指導、メンタルサポートまで行うトレーナーたちの存在だ。トレーナーたちの採用、育成を取材した。
取材・文/井上 佐保子 写真/ライザップ提供、宇佐見 利明
トレーナーの採用基準
2012年に事業がスタート、5年ほどで全国100店舗以上、累計会員約7万人に急成長したライザップ。サービスを支えているのは各店舗のトレーナーたちだ。同社はどうやってトレーナーの質を確保しているのか。トレーナーの採用、教育を担当する統括トレーナー/教育ユニット長の幕田純氏と教育ユニット/リーダーの管野翔太氏に話を聞いた。
中原
人手不足と言われる今の時代に、トレーナーの採用率がわずか3.2%と聞きました。どのような採用基準を設けているのですか。
幕田
「人を喜ばせることを自分の喜びとする人」というのが一番の採用基準です。応募者の中にはトレーナー経験者も数多くいますが、知識技術だけが重要なのではありません。知識技術は教えれば身につきますが、資質のほうは後から獲得するのが困難なので、そこは厳しく見ています。
中原
知識技術よりもホスピタリティを重視するのはなぜでしょうか。
幕田
もちろん両方兼ね備えた人がベストです。ですが、例えば過去にダイエットをして人生が変わった経験をしていて、「ゲスト(お客様)にも同じような経験をさせてあげたい」といった情熱を持つ人を採用したい。ダイエットには苦しいこと、つらいことも多々ありますが、経験者ならば乗り越えた先に何があるのかを見せてあげることができます。“変わることの価値”を分かっていることが、何よりも重要だと考えています。
中原
他のスポーツジムとライザップとはどこが違うと感じますか。
管野
「相手のために何ができるか」を一番に大事にする“for youの精神”でしょうか。多くの人がダイエットに失敗してしまう理由は、食事や運動の方法が分からないからではなく、それを続けられないことが多いからです。だとすれば、方法論以上に、続けられるよう寄り添うことのほうが大事。「ゲストに寄り添う」という考え方は当社の特徴的な点かもしれません。
中原
ライザップは、トレーニングジムというより、コーチングやメンタリングによってダイエットをサポートするサービスなのですね。それにしても、ひとりでダイエットをすると、なぜ失敗しがちなのでしょうか。
幕田
ダイエットに成功した喜びの瞬間を想像すると同時に、それを達成するまでの困難も同時に想像してしまうからだと思います。目標が高ければ、その分、高いハードルを越えなければなりませんが、その高いハードルを具体的にイメージすると、「無理だ」と挫折してしまう。そこで我々はまず、高い理想を掲げ続けるお手伝いをします。そして、つらい時、苦しい時も「一緒ならハードルを越えられますよ」と支えていく。それを持続することで、目標に到達できるのです。
中原
採用の際、ゲストを喜ばせる資質はどうやって見抜くのですか。