SPECIAL INTERVIEW 町民も職員も企業も一体となったまちづくり「融和」の作用で人口減少社会に挑む
「町の課題を解決したい」。
同じ目標をめざすことで、町民、職員、そして企業が変わり始めた―
プロジェクトに関わる人々の心に火をつける方法とは。
住民参加型のまちづくりに積極的な、岩手県雫石町のトップに、日本の問題、町の課題について尋ねた。
自然の資源が豊富な雫石町
東京から新幹線でおよそ2時間30分、岩手県の中部に位置し、秋田県と隣接する場所に雫石町はあります。
東京23区とほぼ同じ広さを誇る雫石町の強みといえば、何といっても環境資源が豊富なことです。
北に岩手山、西には駒ヶ岳など標高1000mを超える数々の山が連なり、葛根田川をはじめ3本の川が流れます。標高300m以上の場所が総面積の8割を占め、山麓部に開かれた傾斜地には、天然林や牧野、田畑などののどかな田園風景が広がります。
主な産業は、農業と観光業です。きれいな水と豊かな土壌で育った米や野菜の味の良さには定評があります。酪農も盛んです。小岩井農場は観光地としても有名で、全国からたくさんの人々が訪れます。10以上の源泉、50以上の温泉施設を擁する温泉天国であり、3つのスキー場を持つウィンタースポーツの絶好スポットでもあります。
再生可能エネルギーの開発にも力を入れていて、地熱発電や太陽光発電なども駆使しています。
人口減少の壁が立ちはだかる
しかし、これだけ豊かな資源を持つ雫石町でも、たくさんの課題を抱えています。
中でも少子高齢化と人口減少による影響は、他の自治体同様、最大の課題といえます。
皆さんは、「増田レポート」と呼ばれる報告書をご存じでしょうか。旧建設省出身で、過去には岩手県知事や総務大臣を務められた増田寛也氏を中心とするメンバーが2014年5月に日本創成会議で発表した、日本の将来人口に関する報告書のことです。
この報告書の中で増田氏らは、少子化や人口移動に歯止めがかからず、現在の機能を維持できなくなる市町村が存在することを指摘しました。その数は896と、全国の市区町村の半分に当たるといいます。地方のいわゆる限界集落だけでなく、東京都の豊島区も含まれており、大変な話題となりました。
多くの自治体が抱える問題ですが、雫石町も例外ではありません。町の人口は2000 年台初頭の約2万人をピークに、現在は1万7000人程と、じわじわと減少傾向をたどっています(図)。