CASE 2 丹青社 外部とつながり、そのつながりを活かす “しごとの作法”を学ぶ実践型新入社員研修 「人づくりプロジェクト」
商業空間や文化空間、イベント空間等、人が行き交うあらゆる空間づくりの課題解決を行う丹青社は、
2005 年から、オリジナルの実践型研修「人づくりプロジェクト」を実施している。
新入社員が、一流のデザイナーや職人と協業し、プロダクトを完成させるオリジナルの実践研修だ。
ここで磨かれるのは、ネットワークを築き、パートナーの意欲を引き出すディレクション能力。
空間づくりによって社会課題の解決を図る同社に欠かせない
“しごとの作法”を身につけさせる。
●基本的な考え方 外部とつながる力を高める
■事業を通じて社会課題を解決
「空間づくりによる課題解決力」。丹青社は、自社が提供する価値をこう定義している。
商業施設、文化施設、イベント施設と、さまざまな領域の空間づくりを手掛ける同社。人と人、人とモノ、人と情報が行き交う空間をつくり出すことで、社会交流を促し、地域活性化、文化遺産の継承、子どもたちの教育にも貢献している。
例えば、東京ドームシティの「宇宙ミュージアムTeNQ」(東京都文京区)。産学連携により、子どもたちが楽しみながら宇宙について学べる空間づくりプロジェクトに携わった。「高根中郷館キッズスペース」(静岡県御殿場市)は、かまくら型のドームが並ぶユニークな世界観が特徴。老朽化した公民館をリノベーションし、子どもたちの好奇心を搔き立てる、秘密基地のようなスペースをつくる提案を行った。地域の教育や活性化に貢献している事例だ。また、「春日大社国宝殿」(奈良県奈良市)では、最先端の映像技術を用いたインスタレーション(空間芸術)による演出を施し、訪れる人に、感動と文化財の魅力を伝えている。
さまざまな社会課題を解決する同社の事業は、まさにCSVそのものとも言える。そして課題解決のため、同社が育成するのが“空間づくりのプロフェッショナル”だ。その要件として重視するのは、「コラボレーションする能力」と「ダイバーシティの感覚」である。以下からは2つの素養を同社がどう培い、伸ばしているか、見ていくことにしよう。
■プロの要件:“しごとの作法”
同社が追求するのは、「こころを動かす空間創造」だ。「家にいてもネットで買い物ができ、映画や音楽などの娯楽が楽しめる時代。そんな今日において、わざわざ人々が足を運びたくなる空間をつくるには、常に新しいアイデアやデザイン、技術が欠かせません」(山岡氏)。また、魅力ある空間をつくるには、直接的な顧客である事業主だけでなく、その先にいるエンドユーザーや社会に目を向ける必要がある。
そこで鍵になるのが、「外部とつながり、そのつながりを活かす力」である。企画・調査からデザイン・設計、制作・施工、運営まで、空間づくりのあらゆるプロセスに関わるため、同社と取引のある協力会社は全国で2000 社以上。現在もネットワークを拡げている。彼らと共により良い空間を生み出すには、企業、組織の壁を超えて、知恵や技術を活かし合わねばならない。
その際、大事にしているのは①オープンイノベーション、②人材ネットワークの構築、③しごとの作法の3点だ。このうち『しごとの作法』は、同社流の仕事の進め方や求められる意識、コミュニケーションのとり方などを指す。
「まず、デザイナーやクリエイターとコンセプトをしっかり握ること。そうすることで、仕事の“軸”を見失わず、意匠デザインをする時も、予算や納期など現実的な課題にぶつかった時も、本来の目的に立ち戻ることができる。
ただし、コンセプトを握るうえでは、自分の思いを伝えることが欠かせません。ネットで調べただけの表面的な情報を説明したところで、一流のデザイナーや職人には相手にされない。『自分が使うとしたらどうか』『こうしたらもっと面白くなる』といった、自分自身の思いをぶつけなくてはなりません。互いの考えが一致しなくても、そこから新しいものが生まれます」(松山氏)
「問われるのは、パートナーのモチベーションを上げる“ディレクション能力”。なぜそうしたいのかを自分の言葉で語れなければ、筋金入りのデザイナーや職人は納得しません」(松村氏)