CASE 1 キリンホールディングス カギは顧客目線とよそ者感 地域と社員の“誇り”を 成長につなげるCSV
トップダウンでCSVを冠した部署を設け、健康・地域・環境をテーマに取り組むキリン。
特に地域活性化の分野では、多くの社員を巻き込みながら、
一人ひとりのCSVの意識を高めている。
CSVマインドの醸成は、どのように社員の成長につながるのか。
取り組みを通して社員が得るものとは何か。責任者に話を聞いた。
●背景 トップ主導で取り組み開始
キリンホールディングス(キリンHD)は2013年、日本の事業統括会社であるキリンの設立と同時に、CSV本部CSV推進部を立ち上げた。現キリンHD・キリン社長の磯崎功典氏が、米国ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授を通じてCSVの概念に感銘を受け、経営戦略の柱にするべくトップダウンでリードした。
酒類メーカーとしての責任は前提として、多くの社会課題の中から、同社がCSVの重点課題に挙げたのは、「健康」「地域社会への貢献」「環境」である(図1)。
「社内では以前から事業を通じたCSRという考え方とアクションはありましたが、改めて会社の指針として明確に打ち出しました。グループの理念そのものでもある『健康』、企業も主体者となって必須で向き合うべき『環境』、我々の事業基盤である『地域社会への貢献』をCSVの柱に据えました」(執行役員CSV戦略部長の林田昌也氏)
●取り組み事例 地域の誇りを取り戻すCSV
■47都道府県の一番搾り
中でも積極的に活動しているのが『地域社会への貢献』だ。代表的なのが、2016 年に発売し、当初の年間目標を大幅に上回る大ヒットとなった「47都道府県の一番搾り」である。
「2015年10月から各都道府県で地元の人が参加する『共創ワークショップ』を開催しました。行政の方、文化や情報に詳しい大学の方など、各都道府県それぞれ10 ~20名のさまざまな方に参加してもらい、県民性やその土地のおいしいもの、盛り上がることなどについて数時間かけて話し合ってもらいました」(林田氏)
話し合いの内容をビールのコンセプトやフレーバーなどに落とし込んでいき、47 都道府県全てで味もメッセージも違うビールを作り上げた。例えばカープファンが多い広島ではビールの色を若干赤めにするなど、その土地の特徴やお酒の飲み方も反映した商品になっている。
「この取り組みには、何より各地域の誇りと一体感を取り戻すきっかけを提供したいという思いがありました」(林田氏)