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Column2 「個人の成長」「組織の活性化」 「組織の社会性」の同時実現を
日本能率協会が提唱する「KAIKA経営」は、個人・組織・社会性の3つを同時に高めていくことをめざすもの。
CSVの取り組みにおいても、このバランスは欠かせないだろう。自社のよりよい経営のために、組織や個人に求められるものは何か、同協会理事でKAIKAセンター長を務める曽根原幹人氏に聞いた。
なぜ「社会」の視点が必要なのか
やや乱暴な言い方だが、これまで、企業にとっての価値は業績だった。業績の向上そのものが、物質的な豊かさを追求するという社会課題の解決に寄与してきたともいえる。
しかし、時代は変わった。企業は、「何をやるか?」ではなく「なぜやるか?」を訴求しなければ、顧客を含む社会の共感が得られない時代である。この「なぜ?」に社会への貢献や社会課題の解決が入ってくると、ステークホルダーの共感・納得が得られやすい。
企業に社会性が必要だというのは、昔からいわれてきたことだ。明治時代には、日本の近代経済社会の礎を築いた渋沢栄一が、「道徳経済合一説」を主張した。バブル期の1990年には、日本能率協会が「市民主義経営」という考え方を打ち出し、近年も、一橋大学の野中郁次郎名誉教授が「共通善」に基づく事業活動の必要性を訴えている。これらに共通するのは、「利他」の精神。企業の目的が利潤の追求にあるとしても、目の前の利益を独占するのではなく、人や社会と分け合うことが、長い目で見れば得になるのだ。
私たちが提唱するKAIKA経営は、従来のマネジメントでも重要な要素だった「個人の成長」「組織の活性化」に「組織の社会性」を加えた3つの要素を、等しく重視するという考えだ。CSVを社会課題の解決を通じて経済価値を生む“戦略”であると考えると、売り上げや利益を優先し、個人の成長や組織の活性化が二の次になってしまう恐れがある。そのため、この3要素を同時に実現することが重要だと考える。

プロフィール

曽根原 幹人(そねはら みきと)氏
日本能率協会 理事/ KAIKAセンター長
1996年日本能率協会に入職。人事・人材開発分野の各種プロジェクト企画・運営に従事した後、関西オフィス勤務、経営ソリューショングループ長、法人経営センター長を経て2013年より理事。2016年4月より公益事業、調査・研究活動、アジア関連プロジェクトを担当するKAIKAセンター長に就任。