Column1 価値の創出も外部とシェアし、 積極的な“戦略的人材交流”を
社会起業の普及・啓蒙を行う雨宮寛氏が提言するのは、CSVを人材育成につなげる“ 戦略的人材交流” だ。
中でも、NPOなど異なるセクターと組んでプロジェクトを行うことが社員の刺激になるという。
海外のCSR 活動にも詳しい雨宮氏に、話を聞いた。
アメリカで広がるCSV
CSRというのは、企業の社会的責任であり、基本的にはコストセンターといえる。法令順守や製品の安全性、環境負荷の低減など、コストをかけて責任を果たすものだ。一方、CSVは、他のステークホルダーと共に付加価値を生み出し、共有する活動である。この提唱者として有名なのは日本でも知られているマイケル・ポーター氏だが、彼と共に提唱者に名を連ねるのが、「戦略的寄付活動」を専門とするマーク・クレーマー氏である。
戦略的寄付活動とは、「よりよいお金の使い方、社会的インパクトのある使い方をすべき」という考え方である。アメリカでは、もともと寄付文化が発達しており多くの寄付団体があるが、ただ申請されたところにお金を払うばかりでは効果のほどが分からないことから、この考え方が生まれた。戦略的寄付活動に詳しいクレーマー氏が企業活動に着目したことが、CSVの考え方が生まれた背景にあるのだろう。
最近はサステナビリティ経営やSDGs(持続可能な開発目標。環境や教育など17項目・169のターゲットからなる。2015年に国連総会で採択)に取り組む企業も多い。これらとCSVの大きな違いは、“取り組みやすさ”だ。
SDGsの場合、SDGsの全ての項目について、自社がどう対応できるかを検討することが基本となる。一方、CSVは、世の中にある社会課題を網羅的に検討する必要はなく、自社にとってプラスになる社会課題を1つでも見つければ、取り組むことができる。CSVは、純粋な社会貢献ではなく、自社にとっての付加価値を生み出すものなので、「自社のバリューチェーンの中で、どこで新たな価値を生み出せるか」といった視点で考えればよい。
CSVの考え方は、アメリカではかなり浸透してきている。呼び名は「CSRレポート」であっても、その内容は単なる寄付活動や法令順守などにとどまらず、「事業を通じてこういう活動をして、このような社会価値を生み出した」ということが述べられているものが多い。