OPINION2 CSVの3つの切り口とは CSVを推進させる 「気づく力」と「観察する力」
CSVの重要性は理解できるが、具体的なイメージが湧かない、また求められる人材像が浮かばないという企業も多いことだろう。
地域社会の課題に詳しく、企業のCSV 顧問も務める赤池学氏に、国内企業におけるCSVの事例と、そのために必要な人材育成のカギを聞いた。
CSVの3つの切り口
海外と同様に、日本の企業でもCSVに対する機運が高まってきている。これまで私は、環境や福祉といったユニバーサルデザインの観点で、数々の企業の事業やCSR活動をサポートしてきた。ところがここ数年は、CSV活動の監修を手掛けるケースが増えてきた。
特に大手企業では取り組みが進められている。具体的には、社会課題の解決を通じた新たな市場の開拓、顧客ロイヤルティーの向上、また株価上昇につながる可能性の高い事業の開拓などを手掛けているケースが多い。
CSVとは企業価値と社会価値の両立を実現するための経営フレームワークである。ということは、自社の企業活動全体に視野を広げることで、CSVへの糸口が見つかるといえる。CSVの3つの主なタイプを、事例に合わせて紹介しよう(図1)。
( 1 )社会・環境問題を解決する製品・サービスの提供
まず社会問題や環境問題を事業機会と捉え、それを解決できる製品やサービスを生み出し、問題解決につなげるというものがある。最も分かりやすいCSVのパターンといえるだろう。
・トヨタ自動車
例えばトヨタ自動車が販売する「プリウス」が挙げられる。本来、自動車にはガソリンエンジンによる環境破壊という負の側面がある。だが、プリウスはモーターも動力に用いることでこれを軽減させ、「環境によいこと」と「ビジネスの成功」を両立させた。
・キリン
社会課題の解決につながる製品を開発したのが、キリンである。他社に先駆けCSV推進部を発足させた同社は、2016 年に「47 都道府県の一番搾り」を発売した。ビールで各地の個性を表現するにあたり、各都道府県ごとに地元をよく知るメンバーを集めてワークショップを行った。全国的に知名度の高い商品の地域限定版が出ることで、生活者は地元を認識し、愛着を深めることができ、それが地域活性化に役立つ。またキリンにとっては商品力が高まることで売り上げやブランドロイヤルティーの向上が見込めるほか、地域との関係性も密になり、市場での優位性につながる(34ページも参照)。