第24回 ワークライフバランス時代の労働時間管理 藤原英理氏 あおば社会保険労務士法人 代表
働く人の価値観の多様化から「働き方」も変化し、現場の管理職の悩みも“イマドキ”なものになってきています。
そんなイマドキな悩みの解決方法を、社労士の藤原先生が紹介します。
第24回 ワークライフバランス時代の労働時間管理
在宅、リモートワーク、副業といった「自由な働き方」を認める動きが広がる一方で、残業時間については規制が厳しくなっている。当社も自由な働き方には賛同するが、仕事との両立がうまくできない人は、かえって労働時間が長くなり、サービス残業が増えてしまわないか心配だ。どういう形で労働時間の管理をしていけばいいだろうか。
国がめざす残業ゼロ社会
ここ数年、過重労働やブラック企業といった文言を頻繁に見かけます。月間80 時間以上の残業がある企業は社名公開対象となるなど、長時間労働は絶対に認めないという国の強い姿勢が伺えます。
長時間労働を認めない理由としては、過労によるうつや自殺といった悲惨な事件を防ぐためだけではなく、男女共同参画や少子化対策を促すという側面もあります。東京大学の三輪哲准教授が行った調査※ 1 では、長時間労働をしている男性は、そうでない男性に比べ、結婚して子どもがいる率が低いことが示されています。
また、平成17 年の厚生労働白書では、男性の勤務時間と通勤時間の合計時間と出生率との間に相関があることも示されています※ 2。仕事と通勤の時間が長く帰りが遅い男性は、結婚も出産も、その後の育児への協力も難しくなりがちだということです。
キャリア形成の観点からも問題があります。長時間働く人が評価されるような企業では、残業しない人は残業する人に比べて昇進が難しくなります。時短勤務をする女性が男性と平等に活躍できる社会をつくるという意味でも、残業は減らすべきという方向性は正しいでしょう。