人材教育最前線 プロフェッショナル編 社内外に出る「アクティブHR」で 「信頼ある人事」を体現する
人事業務の経験を持たないまま、2013年に人事部長に就いた白岩徹氏。自らの就任を「人事部を変えよ」という経営からのメッセージと受け止め、改革に取り組んできた。
めざす姿は「信頼ある人事」。社員や経営からの信頼がなければ、いくら新たな施策を打っても成果に結びつかないからだ。そこで、「アクティブHR」を掲げ、現場や社外へと積極的に出掛けている。課題や人材育成のヒントを自らつかみ、率先して取り組むことによって、社内の信頼を獲得し、改革を推進している。
人事部に抱いていた違和感
KDDIに入社以来、18 年間を営業一筋で過ごし、その後4年半カスタマーサービス(CS)企画部長を務めてきた白岩氏にとって、人事部長への就任は、まさに青天の霹靂だった。
着任したばかりの時は、右も左も分からない状況だったが、それでも、「何かを変えなければいけない」という思いだけは強く持っていた。
「人事部に来るとは思ってもいませんでしたから、頭の中は真っ白でした。でも、そんな人間に人事部長をやらせるとはどういうことか、自問自答しました。そして、従来のやり方を踏襲せよということではなく、『人事を変えよ』というメッセージだろうと、自分なりに受け止めたのです」
白岩氏はCS 企画部長時代、CS部門の人事を担当していたことから、人事部とは接点があった。その頃から、人事部には違和感を抱いていた。
「例えば、新たな人事施策を行うことになった時に、人事部にその背景を聞くと、『経営の意思』だと言われました。つまり、経営から言われた通りに動くのが人事であり、そこに人事部としての意思はあまり感じられなかったのです。また、人事部に用事や相談がある時は、人事部は動かず、こちらから出向かなければならない。そういう“お役所的”な姿勢も苦手でした。
私は、人事には『会社をこう良くしたい』という熱い思いが必要だと思いますし、時には経営に対して意見を言わなくてはいけないセクションだと思っています。営業の時は数字を稼ぐこと、CSではお客さまの満足を高めることに一生懸命取り組んでいましたから、人事部の仕事に対する態度が気になり、異動前は『その姿勢は何だ!』と、何度か喧嘩したこともありました」
KDDIでは1年に一度、人事部主管で「解体新書」という社員満足度調査を実施している。白岩氏はCS 企画部長時代、毎年、人事部から自部門の調査結果の報告と指導を受けていた。
「『解体新書』は組織の風土文化を測る指標であり、部長にとっては部員からの“通知表”だと思っていました。ですから、評価の低い項目を高めていくためにはどうすればいいか、約80人いた部員とディスカッションをして、いろいろな意見を出してもらい、できることから取り組んで少しずつ評価を高めるよう努力してきました」
ところが、人事部長就任後、人事部の「解体新書」の結果が、全部門の中で最下位に近いことを知る。
「他部門の指導をする立場にある人事部がこんな体たらくなんて、あり得ないと思いました。この時改めて、変えるべきところが山ほどあることが分かりました」
意見を出しやすい風土づくり
もともと白岩氏は、管理職になってから一貫して自らの組織のコミュニケーション強化に努めてきた。それが、組織のパフォーマンス向上に直結するからだ。前述の「解体新書」の結果を踏まえたディスカッションもその1つといえる。