第2回 必要な人材を見極める方法 遠藤裕隆氏 富士ゼロックス クラウド&メディア事業開発部事業開発センター シニアコンサルタント
現場力を高め、変革をリードする人材の育成に欠かせないものは何か。
それは可視化できるような人材育成の「仕組み」をつくることである。属人的にならない仕組みを構築し、共有・運用していくことは、人材育成における基本ともいえるが、果たしてどれほどの企業でこれが確立されているだろうか。本連載は、経営と現場の視点で、人材育成の仕組みづくりについて解説する。
●人材育成フレームワークの狙い
前号は、人材育成のグランドデザインの全体像について解説した。今号は、人材育成のグランドデザインのエンジン部分に相当する人材育成フレームワークについて解説する。
人材育成フレームワークは「人材の可視化(人材戦略策定)」「成長の可視化(育成戦略策定)」「伝承の可視化(育成戦略実行)」で構成される(タイトル下図)。
「人材戦略策定」とは、事業戦略実現に必要な人材ニーズから、人材モデル(人材の質)を明確にし、中長期的に人材調達戦略(採用戦略、外部活用戦略、人材育成戦略)を企画するということ。「育成戦略策定」とは、組織の人材強化(質と量)のために、キャリア開発計画とこれを実現するための育成ガイド(育成体系図)を策定すること。「育成戦略実行」とは、能力開発を実現するために、育成手段を設計して教育を実施することである。
今回は特に、「人材の可視化」「成長の可視化」について解説する。これは、具体的には、企業の「事業戦略実現のためには、どのようなことができる人材が必要か分からない」、社員の「自分がどう成長すべきか分からない」という疑問に対する解決策であり、「どのようなことができるか」(能力モデル)、「どのような人材が必要か」(人材モデル)を明らかにするものである。事業戦略を実現する人材モデルを明確にして、短期的かつ中長期的に社員の能力を育成することが狙いだ。ここでいう能力とは、よく「能力の氷山モデル」で表現される資質(性格、才能)、情意(態度)、知識、スキル、行動(コンピテンシー)をさす。
この人材モデルが決まれば、企業は、どのように人材を調達するか(人材調達戦略)、どのように人材を育成するか(育成戦略)を具現化できるようになる。さらに社員は、人材モデルをベースにキャリアパスを検討できるので、自分がどう成長できるかが分かる。
●「 人材」を可視化する!
■仕組みの要「タスク分析」
まず、「人材戦略策定」における人材モデルの策定法から考えたい。人材モデルを明確にするために必要なのが、タスク分析である(図1)。タスク分析の狙いは、現場での業務遂行に必要な業務遂行要素として、業務機能、能力(能力モデル)、職種(人材モデル)、組織、職場環境(インフラなど)、タスクの入出力(業務の始まりと終わり)情報、目標値(KPI)、などを明確にすることである。