寺田佳子のまなまな 第14回 関鉄工所 社長 関英一さんに聞く ワザと絆のつなぎ方
町工場の職人たちが、ボブスレーのソリづくりでオリンピックをめざす―
そんな夢溢れるプロジェクト、「下町ボブスレー」の一員・関英一さんが今回のお相手。
ソリに必要となる膨大な数の部品を短期間でつくり上げることができた理由には、太田区の町工場が持つ、“ 仲間まわし”の文化があるといいます。
互いの強みを熟知したそのネットワークについて、実物のソリを見ながら伺いました。
迫力ある“ボブスレー”の世界
「『下町ボブスレー』、ジャマイカ代表チームの採用決定!」
「『世界最強のものづくりの技』と『世界最強の身体能力』がタッグを組んでオリンピックに挑戦!!」
このニュースに胸を熱くした“にわかボブ女子”も多かっただろう。という私もそのひとり。ボブスレーといえばテレビでしか見たことがなかったが、「氷上のF1」と呼ばれるそのスピードにドキドキし、ハイテクの粋を集めたソリのカッコよさに見惚れ、そのソリをコントロールする選手の逞しさに息をのんで、思わず「スゴイなぁ~」とつぶやいたものだ。なにしろ欧米では、イタリアのフェラーリ、ドイツのBMW、イギリスのマクラーレンと、有名自動車メーカーがナショナルチームのソリを開発するため、国の威信をかけた技術力の闘いともいわれるスポーツである。
そんな世界に、東京都大田区の町工場の技術者たちのソリがデビューしたのである。
そのうえ、映画『クール・ランニング』(1993年・アメリカ)の舞台で、レゲエ・ミュージックの本場で、ウサイン・ボルトの故郷でもあるジャマイカの選手が、メイド・イン・ジャパンのソリに乗るというのだ。事実は映画より面白い、ではないか!
町工場に活気を取り戻したい
それにしても、いったいなぜ、大田区とジャマイカとボブスレーが結びついたのか。その答えを探しに“にわかボブ女子”が大田区へ向かうと、町工場の2階に、「下町ボブスレー」最新鋭の7号機が待っていた。
全長3m余り、重さ約200kg。堂々たるボディの上部をジャパンカラーの赤に染めたその姿は、「早く氷の上を滑りたくて」うずうずしているようにも見える。
そしてその7号機に寄り添うように立っているのが、このプロジェクトの中心メンバーのひとり、関鉄工所社長の関英一さん。今回の“まなまな”のお相手である。
あら、ボブスレーって、想像していたよりスマートで綺麗ですね。
「でも、選手が乗って帰ってくると傷だらけになってて。一生懸命戦ってきたんだなぁ、と思いますよ」と愛おしそうに語る。
傍目にはもはやソリと一心同体の関さんだが、2011年に下町ボブスレーネットワークプロジェクトが始まった頃は、「ボブスレーって何?」という状態だったそうだ。