OPINION2 成果が出ないのは、性格や能力のせいではない! “個人攻撃の罠”に陥らずに 望ましい行動を引き出すアプローチ
組織のパフォーマンスを上げるためには、上司のリーダーシップが欠かせない。
しかし、リーダーの性格や能力にばかり注目していても限界がある。
部下のパフォーマンスを高めるうえでも、個人の属性に原因を求めると改善が難しい。
ではどうするか。行動分析学を専門とする法政大学の島宗理教授に、“望ましい行動”を生み出すフレームワークと取り組み方を聞いた。
変えるべきは部下の“行動”
「リーダーの役割」は、行動分析学の視点から以下のように定義することができる。
リーダーの役割は、部下から
①「業績を生み出すのに重要な行動」の
②「自主的な実行」を
③「引き出し、維持すること」
多くのリーダー論、リーダーシップ論は、性格、能力、態度などリーダーの属人的な特性に着目する。だが、リーダーが弱気であったり内気であったりしても、企業にとって重要な成果を上げるために部下から必要な行動を引き出していれば、リーダーとしての役割を果たしているといえる。リーダーになることができるかどうかは、リーダー自身の性格や能力ではなく、部下の“行動”を変えられるかどうかにかかっているのである。
例えばここに、部下に対してなかなか話しかけられないリーダーがいるとしよう。我々は通常、「この人は、引っ込み思案だから部下に話しかけられない」などと、行動の原因を性格のせいにする。しかし、行動分析学の視点で捉えると、「話しかける」という行動をしようとしない人を「引っ込み思案」と呼んでいるだけであって、引っ込み思案だから話しかけられないわけではない。
この捉え方が分かりづらければ、もっと実用主義的に考えてもいい。望ましい行動をしていないからといって、自社の人材を総取り換えできるわけではない。つまり、性格のせいにしてしまうと、解決のしようがないのだ。それならば、「あの人はこういう性格だから」という“個人攻撃の罠”から脱却し、今いる人材をどう活かすかを考えたほうがよい。
また、実際のリーダーにはプレイングマネジャーが多いが、本人が頑張って成果を出しても、その人1人分の成果にしかならない。加えて、個人の特性に頼っていては、その人がいなくなった時に困る。「周りの人の力を使っていかに大きな成果を出すか」という視点で、個人の性格や能力に依存せずに、業績を生み出す仕組みを持つ必要がある。