巻頭インタビュー 私の人材教育論 顧客と社員からの声で 会社はよりよいものになっていく
今年で創業70 年を迎えるちふれ化粧品。
高品質・適正価格という方針を貫き、業界における独自のポジションを築いてきた。
ブランド力の基礎には、女性がのびやかに働ける環境づくり、自由に意見の言える風通しのよい風土、社員の自立精神を育む姿勢があるという。
片岡方和社長が抱く、経営と人づくりの信念とは。
「真実の瞬間」を担う美容部員
―業績が好調ですね。要因はどこにありますか。
片岡
前期(2016年3月期)は順調で、商品の全体売上個数は年間4200万個に達しました。雨の日も風の日も毎日12 ~ 13万個売れた計算です。背景には、創業以来こだわり続けてきた品質への評価があると考えています。我が社の愛用者室には、毎日お客様から多くの声が届けられます。中には「ここをこう直したらいいのでは」という厳しいお声もいただきます。
当社では以前より、そうしたご指摘やご要望について毎月、問題点を洗い出して解決策を検討し、取締役や執行役員、関係部署の責任者と共に議論してきました。長きにわたるこうした取り組みで品質向上に努めてきたからこそ、当社の化粧品が、「品質がよいのに手が届きやすい価格だ」という評価を生み、売上好調につながっていると受け止めています。
―事業上の課題と、それを解決するための人事面の施策を教えてください。
片岡
まず販売が好調のため、生産体制の充実、安定供給が喫緊の課題です。品質を維持しながら進めていかなければいけないので、現状よりももっと工場に多くの人材を割かなければいけないと考えています。
商品面では、カウンセリングブランド「綾花」の強化です。現在、リブランディングプロジェクトの中で、商品・売場・販促・美容部員・広告など多面的に検討をしています。特に、カウンセリングの質と量を充実させるために人材面で鍵を握るのは美容部員です。
品質にこだわり抜いてつくられた商品は、最後は美容部員の手によってお客様の元に届きます。マーケティングでは、お客様と接するわずかな時間が、その会社や商品の印象を決定づけるといわれています。スカンジナビア航空の元CEOヤン・カールソン氏はそれを「真実の瞬間」と表現しましたが、我が社ではその瞬間を担っているのが美容部員なのです。
美容部員の教育は従来から重視していますが、今後はさらに力を入れる必要があります。また、仕事に対するモチベーションや会社に対するロイヤルティーを上げてもらうために、段階的な正社員化も視野に入れています。
うそのない事業活動
―直近の事業戦略について伺いましたが、背景にある理念についても教えてください。
片岡
まず、一番大事な経営理念(ちふれ宣言)として以下を掲げています。
「私たちは、正義感と誇りをもって、うそのない事業活動を行い、世界中の人々と共に、心ゆたかに生きられる社会・文化の創造をめざします」