若者の傾向から見る未来 “まったり派”のハートをつかみ、 超エリートを狙い撃て
未来の企業の中核を担う若者たち。
中でも「不可解」とされるのは、10 ~ 20 代くらいの「さとり世代」だ。
若いのに悟ったような言動が目立つことから、こう呼ばれるようになった。
彼らが望む働き方とは。人事は彼らにどう向き合うべきなのか―。
現代の若者の心理に詳しい原田曜平氏に聞いた。
「若者不足」で倒産する時代
―未来の日本企業を担うのが、今の若者世代です。彼らとの向き合い方を教えてください。
原田
少子化が進み、若者の数が圧倒的に減る現実を認識すべきです。大恐慌にでも見舞われない限り、2030年には、彼らはどこにでも就職、転職できるようになっているでしょう。
労働力の争奪戦が激化すれば、多くの企業で、若者に望まれるよう体質改善する必要が生じます。若手人材の確保が難しい運送業などは、かなり前から対策を講じていますが、これからは業界を問わず、どれだけ若者のニーズを人事戦略・人事制度に取り入れられるかが重要になるはずです。
―企業としてどんな人材が欲しいかより、いかに若者に合わせるかを考えるべきなのでしょうか。
原田
どんな人材が必要かはその会社の事業戦略によるので、それぞれの会社が考えればよいことです。しかし、求める人材像を決めるだけで終わってしまっては採用につながりません。これまではそれで済んだかもしれませんが、人が採れなくて倒産する時代はすぐそこまで迫っています。
消費より“まったり”が好き
―では、今の若者のニーズとは。昔の若者とどんな点が違っているのでしょうか。
原田
2013年に「さとり世代」という言葉が新語・流行語大賞にノミネートされました。なぜこの言葉が注目され、世の中に広まったかというと、彼らがこれまでの若者とは異なる“不可解”な若者だったからです。
いつの時代も「最近の若者は分からない」などといわれますが、分からない度合いが高くなった、あるいは“分からなさの質”が変わってきた、といえるでしょう。
戦後の歴史を振り返れば、どの世代の若者も物欲、サービスに対する意欲を持っていました。団塊世代もしらけ世代もバブル世代も、「カラーテレビが欲しい」、「車が欲しい」など、対象は違っても、一貫して消費への興味はあったのです。
ところが、さとり世代と呼ばれる今の20 代は違います。ブランド品にも海外旅行にも関心がなく、地元で“まったり”するのが好き。消費のみならず、恋愛その他、何に対してもあまりエネルギッシュでない。マーケティング的に言えば、不可解なだけでなく、“不都合な世代”です。
こうした若者が生まれた背景には、やはり経済不況があります。彼らはデフレ経済、不景気しか知らずに生きてきました。最近になって多少、景気が持ち直したといっても、非正規雇用率は依然として高く、長期的な昇給は期待できません。
同時に彼らは、経済不況を経験しているとはいえ、生まれた時からモノやサービスが溢れる成熟社会で育っています。そもそも物欲が乏しいのも仕方ありません。同じ現象は日本のみならず、先進諸国で広く見られます。若者が“まったり”するのは、歴史的必然と言っていいかもしれません。