人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第51回 「きっと、うまくいく」川西玲子氏 時事・映画評論家
「きっと、うまくいく」
2009年 インド 監督:ラージクマール・ヒラニ
この作品は2009年にインドで公開され、興行収入を塗り替える大ヒット作となった。インドの教育界最高峰の工科大学を舞台にした青春ドラマである。全体的にはテンポのいい喜劇だが、社会性も高い内容で、日本では2013年に公開されて話題になった。
主役はランチョー、ファルハーン、ラージューの3人。それぞれ個性的な若者だ。ランチョーは「Aal Izz Well」(きっとうまくいく)がモットーの、自由奔放な若者。競争至上主義で若者たちを追い立てる社会の在り方に疑問を抱いている。そのため学長としばしば衝突するが、成績は優秀だ。
ファルハーンは中流家庭の息子で、生まれた時点で父親に「この子は将来エンジニアになる」と決められてしまった。その意向に沿って工科大学に進学したが、本当は動物写真家になりたい。だが父親にそれを言い出すことができないでいる。
ラージューは家庭が貧しく、父親は病で寝たきりだ。姉は未婚でまだ実家にいる。両親の期待を背負って常に重圧に悩まされ、お守りの指輪をたくさんつけている。このラージューとファルハーンの成績は、何とかぎりぎり合格という低空飛行である。