巻頭インタビュー 私の人材教育論 自ら学び、建設的に議論し合う 創造的な組織で2020 年へ
売り上げの8 割近くが海外市場で、7000人を超える従業員のうち日本人は既に4 割程度―。
グローバルな戦いの中で勝ち残っていくため、アシックスは思い切った構造改革に取り組んできた。
2020 年東京オリンピック・パラリンピックのゴールドパートナーとなり、海外市場でのさらなる飛躍をめざす尾山基社長に、今後の人材開発について聞いた。
新中期経営計画の手応え
―2016年1月から始まった新たな5カ年計画の手応えはいかがでしょうか。
尾山
「ASICS Growth Plan(AGP)2020」では、「2020年12月期の売上高7500億円以上」を目標としています。そのうち20%にあたる1500 億円は、直営店と自社運営のEコマースによる「Direct to Consumer(DTC)チャネル」でまかなう予定です。立ち上がりとなる今年度の売り上げは、米国での取引先の破たんやブラジル経済の変調、為替変動の影響などを受けて、当初計画を少し下回る予測です。ただアジア地区は好調で、第2四半期終了時点で中国などは前年対比50%以上の伸びを示しています。韓国でもパートナーショップとのビジネスの見直しを進めており、今後の成長が期待できます。利益面については、目標を堅めに設定していたこともあり、計画を上回っています。
―健康志向の高まりが追い風なのでは。
尾山
中国市場での売上拡大は、まさに国の健康増進政策により国民の健康意識が高まっていることを受けたものでしょう。アジアは富裕層が増えるにつれて、人々の健康意識が高まっているため、今後もスポーツ市場の拡大基調が続くと見ています。
一方で、特に欧米でスポーツとファッションの境目がなくなってきています。結果、当社のブランドでいえば「オニツカタイガー」や「アシックスタイガー」のような“街履き”として使える、カジュアルで汎用性の高いスニーカータイプの需要が伸びているのです。こうしたニーズをつかむため力を入れているのが、スポーツライフスタイルカテゴリーです。
―今後の課題は、先ほどのDTCチャネルでの売り上げ拡大、ですね。
尾山
前回の5カ年計画も、スタートして2年ぐらいは緩やかな伸びながら、後半3年間の追い上げにより売上目標を達成しました。今回も2018年ぐらいからが勝負と捉えています。
主力のランニングカテゴリーでは、ニューヨークシティマラソンをはじめとして欧米の主要なマラソンで50%前後のシェアを確保しています。DTC事業については、今のところ目標を全売り上げの20%に設定していますが、いずれ上方修正を見込んでいます。伸びしろは非常に大きいと思いますね。
―AGP2020の最終年には、ゴールドパートナーである東京オリンピック・パラリンピックが控えています。
尾山
創業者の鬼塚喜八郎は、スポーツによる青少年の育成を通じて社会の発展に貢献することを志して起業しました。「健全な身体に、健全な精神があれかし」との創業哲学は、近代オリンピック創設の信念と原点が同じです。彼が生きていれば日本で開催されるオリンピックは全力で支援したいと考えたはずです。この大会が世界に誇れるものとなるよう貢献すると共に、ブランドの露出度を高め、大きな飛躍をめざします。